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川島選手2017年インタビュー前編「日本人として、自分らしく」

サッカー日本代表GKの川島選手にとって2016年は激動の年だった。

ベルギーでの5年間と半年の浪人生活の後、スコットランドのダンディーユナイテッドで半年間プレイ、その後世界5大リーグの一つであるフランスリーグのメスへ入団した。日本人にとって海外で活躍することが一番難しいと言われるゴールキーパーというポジションで現在も挑戦を続けている。

英語を始めイタリア語やフランス語など五ヶ国語を操ることでも知られ、グローバル・アスリート・プロジェクトの発起人兼アンバサダーの一人として、スポーツ選手の言語学習や、英語サッカースクールなど、語学面から若者の海外進出を支援している。

3D ACADEMYはグローバル・アスリート・プロジェクトをサポートするセブ島の英語学校として、そんな川島選手にインタビューし、語学に関する話題を中心にご自身のキャリアやこれから世界に旅立とうする若者についての思いをうかがった。

この前編では、2016年を振り返りながら、現在の海外生活やヨーロッパの文化・言葉などについてお聞きした。

(聞き手:3D ACADEMY代表 森田)

「このくらいでいいとは思わない」

ー 前回のインタビューが、ちょうどスコットランドのダンディーに行かれてすぐの時だったかと思います。まずはスコットランドでの生活で、驚かれたことなどありましたか?

やはりスコットランドの訛りの強さですね。僕らってどちらかというとアメリカ英語を勉強してきたから、ついて行くのが難しい。例えば、ダンディーに行く前にイギリスのレスターに練習に行った時から、頑張ってついて行ってて、でもダンディーに行って駅でタクシーに乗った瞬間もう運転手が何を喋っているのか分からない(苦笑)。

スコットランドもいわば同じ英語の国じゃないですか、なのにこんなに違うんだなと思いましたね。

ー すでにベルギーを経験されていましたが、それでも英語に対する姿勢に変化がありましたか?(註:ベルギーで最初に入団したリールセはチームの公用語が英語だった。)

あくまでベルギーは英語の国ではないし、いくら英語を使っていても、単語がネィティブのものではなかったりしたので。でもスコットランドって本当に英語がベースの国じゃないですか、だから街の看板は全部英語だし、新聞読んでも英語だし、その意味ではスコットランドに行って英語をブラッシュアップできたなと思います。

もちろん最初は聞き取りも難しかったですけど、だんだん慣れてきて、インタビューとかにも普通にできるようになってくる。本場の英語を使う国で自分が実際に問題なくやれたっていうのが一つの自信になるし、環境が変わることでもっと勉強をしたいなという気持ちにもなりました

ー チームで使われている言語で環境を選ぶという面もありますか?

リールセに行った時は、初めての海外だし、キーパーは話せないと仕事にならないので、チームを選ぶ時に(チームの公用語が英語であることは)理由の一つではあったと思います。リールセは本当にファーストステップで、ヨーロッパの環境やサッカーに慣れるという目的があって、自分の良いパフォーマンスを出していくためには、入りやすい環境が必要だったので、丁度よかったなと思ってます。

でも、同じベルギーのリエージュに行った時はフランス語だったので、こんなに違うのかと感じましたね。フランス語で指示出すとなると、「右」「左」だけでも違いますし、考えてから喋っているだけでも時間のロスになってしまうので。

ベルギーとスコットランドの英語も違うんですよ。ベルギーでは単に「Right」「Left」としか言わなかったのに、スコットランドでは「Right Shoulder」「Left Shoulder」ですし。ベルギーではフリーの時とか「Alone」とか言うんですけど、それは「Alleen」ってオランダ語から来ているんですよ。でも普通に英語でいったら「Time」なんですよね(註:時間を使えの意)。だから行く国によって全然違って、最初に行った時に自分で確認しないといけません

ー フランス語圏であるリエージュに3年いらっしゃって、現在はフランスに移られています。もうフランス語に問題ありませんか?

リエージュに行った時に本当に全く話せなくて。そのあとも自信を持って話せるようになったのも2年ぐらいたってやっとでした。フランス語は本当に難しかったですね。今はその時に比べれば、だいぶ話せるようにはなってますけど、それでももっとやらないといけないなとは日々思いますね。

ー それは試合の中で感じられるのですか?

やっぱり日常ですね。生活する上で、家族もいるし、子供を病院に連れて行かなきゃいけないし、家の問題とかいろんな手続きもあるし、それを自分でやらないといけないので、わからないと跳ね返ってくるのは自分にだし。その意味ではもっと勉強しないと、生活は楽にはならない(笑)

ー たしかに仕事で使う英語より、日常の会話ほうが難しかったりもしますね。

でもやっぱり、そうなった時に自分ではいつも勉強したいという気持ちになるので、英語でもフランス語でも、このぐらいでいいかなとはあんまり思わないんです。今もフランスでやってて、別に問題はないけど、今いる環境の中でもっと話せるようになったり相手のことを理解したいというのは、いつも思います。

英語学習コラム①:川島選手とインタビュー

「(TVや記者会見など)インタビューの準備はしますね。基本的にどういうことを聞かれるのかなと考えて、自分の考えとしてはこういうことを伝えたいとか、一応用意しておきます。

それでももっとこういう表現で言えばよかったというのは毎回ありますね。昔も車で走っている時に、自分で英語のインタビューを一人でしてみたりとかしていましたが、今でも自分の考えを英語だったらもっとこう言えばとか、フランス語ならとかってぼーっと考えたりします」

自分自身でいることの大切さ

ー 国が変わることで、サッカーであるとか文化的にも、新たな発見はありましたか?

ベルギーで5年間やってて、近くにはドイツ、オランダ、フランスとあるのでヨーロッパってだいたいこういうものかなと感じてて。でもイギリスに行った時に、紳士の伝統というか、話し方とか言葉の使い方も違うし、それを見て、自分が勝手に決めつけていただけで、違う国に行けば違う国の文化や伝統があるし、それぞれのキャラクターがあるんだなって、スコットランドに行った時は改めてそう思いました。

スコットランドは本当にいい人ばっかりで。ホスピタリティーがあるというか。ヨーロッパにいると、時々なんかこう、けっこう『利己主義』じゃないですか、自分が良ければそれでいいという人が多いし、どっかで自分もそうじゃないとやっていけない部分ができてくるんですね。

でもスコットランドに行くと、人のこと思いやったりとか、言葉遣いを考えたりとか、日本ぽいじゃないですか。そういうとこってあるんだなって感じた時に、やっぱりどういうところにいても、どういう文化の中にいても自分自身でいるってこと、誰に対しても自分が思う態度で臨むっていうのはすごい大切なことなんだなと。

もしその中で生きて行くぬくためにはそうじゃなくて、自分のことばっかり考えないといけないんだとしても、自分の考える自分のオリジンとか、もともとあるものに対して素直に生きるということは大切なことなんじゃないかなっていうのはすごく感じました。

ー リエージュ時代は苦しい時期も長かったイメージがあります。

リエージュにいた時は、隆さん(註:川島選手のマネジメント会社(株式会社BRIDGEs)社長、グローバル・アスリート・プロジェクト代表の田中隆祐さん)にも毎回会うたびに「僕嫌な奴になっていないですか」と聞いてしまうぐらいで(苦笑)。配慮なんてないし、例えば張本人がいるのに悪口をすぐ横で言うとかっていうのも、自分のミスを人になすりつけるのも当たり前だったし、どこかで自分を守らないとやって行けない環境だったので。

普段いる環境って少なからず影響すると思うんですよね。自分では本当はそうではいたくないけど、その中にいる時はそうじゃないと生きていけないという感覚があったので、毎回隆さんに会うたびにそう聞いてたし、でもスコットランドとフランスに行って、そうじゃないんだなってすごく感じました。

ー あえてお聞きしますが、ヨーロッパの人はお好きですか?

リエージュ時代は正直友達減ったんじゃないですか(苦笑)。リールセの時はいろんな友達と関わりあってたし食事とかもいってたし、でもリエージュの時は本当に限られた本当に仲良い友達とかしか食事も行かなくなっていたし、そういう変化はありましたね。もういいやという感じで。

それでも、好きかと言われれば、僕はヨーロッパの人が好きです一人の人間としてみてくれる、それがやっぱり自分としては好きなところです。

もちろんサッカー選手として見られることもあるけれど、例えば普段スーパーであっても、選手としてというよりは普通に一人の人間として扱ってくれるし、自分も自然でいようと思うし、だからあまり肩肘張らないで生活できる。たまたま信号待ちで横にいる人と話すのも普通で、コミュニケーションがナチュラルというか、自分がこういう人間でありたいというのと近いものがあります

リエージュだって、それこそ結婚式に呼んだ友達もいるし、今でも連絡をとっていたり、一生の友達みたいな人とも出会ってるので、そういう意味ではみんながみんなそうなわけじゃなくて、あくまで確率の話かな(苦笑)。

今に集中して、挑戦を続けていく

ー もう海外で7年目ともなると感じられることも変わってきますか?

自分のペースはできてるかもしれませんね。今まではヨーロッパだからこうしなきゃいけない、主張をもっとしなければいけないという中で生きてた気もするし、それが自分が思うから言うし、日本人だからこういうところでは何もいわないというのが自分のスタイルと思えば言わないし、そこの境目がもっとはっきりしたかと思います。

ー サッカーのスタイルとしても違うところがありましたか?

もう全然違いますね。スコットランドは本当にフィジカル中心のサッカーでしたし、その中で自分がキーパーとして強くなければいけなかったので、トレーニングも見直しました。今度はフランスにくると、キーパーがもっとアクティブで守備範囲も広い。

だからいろんな国で経験していることがいまの自分のプレイスタイルにつながっているというのは感じます。

ー 今後のキャリアや言語学習に対してどのようにお考えですか?

選手としてはやはり、日本人のゴールキーパーとして、ヨーロッパのこれだけ大きいリーグでプレイしたことがある人はいないので、そこは挑戦を続けていきたいと思っています。

語学の面でいえば、ベルギーの時とか、今まではインタビューを英語で普通できるようになりたいとか、チームメイトに指示出したいコミュニケーションとりたいとかっていうのが目標だったかもしれませんが、今は海外のチームにいても自分が他の選手に対してどのような言葉をかけられるのかとか、どういう姿勢で接することができるかのとか、そういうところになっています。目標というよりは、自分がもっとこうなっていきたいなというイメージが自分の頭の中にあります。

ー その先もずっと海外で人生を進めていくといったイメージがおありですか?

正直、そこまでのこだわりはないです。僕は日本で生まれ育ってるし、日本が大好きだし、海外に出て日本の良さを感じることも多いですし、だから海外で常に何かを追い求めるというのが自分の中の全ての答えではないです。

ただ、今の自分にとって自分を成長させてくれる環境が海外だなとおもうし、どこかでそれが満足するのかしないのかはわからないですけど、でも、自分の中ではその時その時でその環境は変わるとおもうし、日本でチャレンジする時がくるかもしれないし、そこはもう、その時に考えればいいのかな、今は今に集中して、今の挑戦のことだけを考えてやっていきたいなと思っています。

英語学習コラム②:やりたいことをやる

「勉強って、飽きるからやめるわけじゃないですか(笑)。だから続けるためなら、やることをどんどん切り変えるのはありですよ。

みんな最初は例えば参考書とかを買って楽しくやり始めるんです。「なるほど、こうなんだ」って。でもしばらくすると、ぱらぱらめくって「まだ終わらないな…」って。

なのに「これを出来ないと喋れるようにならない」とか決まっていたら、「また明日やろう」って閉じて、永遠に開かれなくなるんです(苦笑)。

それぐらいなら、違うやり方やって、また戻ってもいいわけだし。だからその時やりたいことやって、例えば好きな曲を翻訳してみるとか、次の週はインターネットで記事を読んでみるとかでいいんです。」

(後編「行って、見て、やってみて」)

多くの日本人がスポーツを通じて外国語のコミュニケーションスキルを身につけ、世界を舞台に活躍することを応援しています。

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