2016/04/20

Global Athlete Project

グローバルアスリートが英語を必要とするということ -【Global Athlete Project × 3D ACADEMY】アルティメット女子日本代表: 森友紀監督・鈴木優子選手② ~クリニック in マニラ~

2016/04/21
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The Binibinis

3D ACADEMYがGlobal Athlete Projectと共同で、世界に挑戦するアスリートを語学面からサポートする「フィリピン留学」プロジェクト ~JOURNEY to YOUR BEST~

その第1号の生徒さんとして留学されたアルティメット女子日本代表: 森友紀監督・鈴木優子選手の滞在レポート第二弾、今回はマニラで行われたフィリピン代表チームへのクリニックの様子をレポートします。

前の記事:
【Global Athlete Project × 3D ACADEMY】アルティメット女子日本代表: 森友紀監督・鈴木優子選手① ~初日~

アルティメット女子フィリピン代表 The Binibinis

先日のレポートでもお伝えしましたが、フィリピンでアルティメットは今人気急上昇中のスポーツ。ということでこれまで中心だったMIX(男女混合)だけでなく、新たに女子代表チームThe Binibinisが結成され今年6月にロンドンに行われる世界選手権に参加することとなりました。

この日は実は、The Binibinisのメンバーがフィリピン各地から集合して練習する最初の日でした。そのタイミングにあわせ前回大会の世界チャンピオンである女子日本代表チームの監督(友紀さん)とキャプテン(優子さん)が参加しクリニックを開催することとなったわけです。

ちなみにbinibiniとはタガログ語でMs.の意味。Ms.Universeとかで使われる言葉で、チーム名のBinibinisはいわばかわいい女の子達という意味ですね。さすがフィリピンの子達、とにかく明るいです。

アルティメットの魅力

そんなBinibini達、はじめは初対面同士のメンバーも多いということもあってか少し固さも見られたものの、トレーニングメニューをこなすうちにすぐに打ち解けていきます。

トレーニングメニューは友紀さんが組み、優子さんが見本を見せます。「日本が取り入れているものと彼女達がやりたいという気持ち、そのバランスに気をつけました」との友紀さんの目論見どおり、Binibini達は各メニューを「Japanese Drill」と楽しみながら、素直に繰り返し練習を続けます。


© Don Laczi @ All About U

「彼女達は理解力があってとても真面目。練習の中でみるみるうちに変わっていき、こんなになるとは思っていなかったほど上手になりましたよ」とお二人。二日間の最後に行われた試合形式の練習では、クリニックで学んだことが随所に見られ、初日の朝に見られたプレーとは見違えるほどでした。

セブから同行した我々学校スタッフにとってはアルティメット初体験。浮力を持ちながら華麗に宙を舞うディスクや、コートを走りそれに飛び込む彼女達の躍動感あふれるプレーを見て「アルティメットは究極のチーム競技と思っています。ディスクにこめられた想いがつながる様子を是非みてください」と友紀さんがおっしゃっていた意味がよくわかりました。




© Don Laczi @ All About U

お二人の英語力は?

さて、我々は英語学校運営者ですので、彼女達のプレーをただ楽しみに行っただけではありません。お二人のコーチングのサポートをさせていただきながら、アスリートと英語の関係について考える良い機会でもありました。

というわけで、お二人には恥ずかしがられましたが、現時点のお二人の英語力をチェックさせていただきました。

まずはキャプテンの優子さん。英語はまだごく初心者で、リスニングは聞き取れる単語からなんとか意味を推測、スピーキングも知っている単語をなんとか並べる程度です(ビギナー)。少しシャイな部分もありますが、本来表情が豊かでボディーランゲージが大きいため自然にカバーされて、海外でも自然と友人を作りやすいタイプです。クリニック中も率先して他の選手とコミュニケーションをとってらっしゃいました。

次は監督の友紀さん。まだレベルとしては初心者かもしれませんが、リスニングでもスピーキングでも基本的なものであればセンテンスとして聞こえ、センテンスで話すことができます(ハイビギナー)。周りの物事に関して好奇心が強く、英語の基礎もある程度できているため、これから勉強と経験を重ねれば重ねるほど自然と語学力が伸びるタイプです。クリニック開始時、全員を前にした挨拶もしっかりとしゃべれていらっしゃいました。

実はお二人とも、我々が事前に聞いていたよりもはるかに、フィリピンの選手達(全員英語が堪能)とコミュニケーションがとれていました。優子さんがチームを盛り上げる力も、友紀さんの指導力も、やはりアスリートの方が日々培われている経験や力が語学(コミュニケーション)でも発揮されていることがよくわかります。

「会話をしているときは、すごい勢いで頭が回転しています。なんとか出てくる言葉を探して話すのですが、正しくなくてもいい、ミスを恐れずに話そうという気分でした」とはお二人の言葉。そんな姿勢もさすがアスリートですね。

アスリートに必要な英語

そんなお二人ですが、より深いことを伝える必要のあるシチュエーションでは「全てにおいて自分の英語力にフラストレーションを感じていた」とのこと。特に今回はプレーするだけでなく、クリニックとして、日本代表からフィリピンの選手達へ伝えるべきことが多くあったようです。

プレイヤーとして参加していた優子さんには、外では普通に馴染めているのにトレーニングやプレー中に動きの説明が必要となった場合に説明に困る、ということが幾度かありました。(例: ”One more step on the side” – もう一歩横で)

さらにコーチである友紀さんにはより多くのものが求められます。トレーニングドリル(シチュエーションを決めた反復練習)ひとつをとっても、各選手の細かい動きや戦術的な意味を英語で説明する際には、的確な表現を使い、その意図を説明できるように複数のセンテンスを組み立てなければなりません。(例: ”American players are very tall with a long reach and they chase us with a very close distance. That’s why we, Asian players, should play well by making inside space.” – アメリカのプレイヤーは背が高いし、リーチが長い。更にフェイスでついてくるので、うまくインサイドスペースを作って、プレーしたい。)

さらにはメンタルの問題など、より抽象的なメッセージを伝たい場合にはより高い英語力が必要になります。そんな際には時折我々が通訳に入らざる得ないことがありましたが、自分の言葉で伝えたかったという思いは強くあったと、後ほどおっしゃられていました。


伝わる瞬間

実際に海外の環境で活動するアスリートにとって、プレーの動き、戦術、メンタルなど、他の選手やコーチとコミュニケーションを取るべき内容は多々あり、そのためにはその場で通じる言語を話せることがベターである、場合によってはそれが必須であることは事実でしょう。

しかしかといって、言葉(英語)が話せなければ何もできない、意図が伝わらないというわけでもありません。

彼女達は同じ競技を愛し、同じ体験を共有するプレイヤー同士です。たとえ説明する英語がたどたどしくても、ホワイトボードに状況を書き、手本を見せて、気持ちを表情に出せば思った以上に伝わるものです。そして同じ時間を長く共有すればするほどお互いの意図や気持ちをより理解できるようになります。

初日の朝、トレーニングの内容を説明するために我々が通訳する場合が度々ありました。しかし午後になり、二日目になるにつれ、一つ一つのドリルや動きを説明するのに我々が呼ばれる回数はめっきり減っていきました。友紀さんや優子さんもアルティメットで使われる英語の用語を覚え、自分たちの英語力の中で説明するのに慣れてきたように見えました。

友紀さんにとっても「トレーニングドリルの説明をしている時に、最初は理解できなくて難しそうな顔をするのですが、説明が終わった後に”OK!!”となって表情が一変する瞬間が嬉しかった」そうです。

さらに時間が経つにつれ、Binibini達はキャプテンのNinaを中心に積極的に話し合い、友紀さんの説明の意図を自分たちですぐに理解していくようになりました。この時点でクリニックはどんどんとスムーズに、効果的に進んでいき、最終的に彼女達のプレーは見違えるほどになったのです。

もう一つ面白いエピソードがあります。トレーニングの最中、友紀さんは代表選手としての心構えやメンタルについて話することがありました。その中で、「もしディスクに触ることができるなら、それは取ることができる(”If you can TOUCH the disk, it means you can CATCH it!”) 。そう思って日本代表はいつもプレイしている」と伝えたところ、その後の練習から途端にキャッチミスが減ったのです。


クリニックを終えて

こうして二日間に渡るクリニックは大成功に終わりました。今年の6月に参加する世界大会に向けて、The Binibinisのメンバー達には得るものの非常に大きいクリニックだったのではないでしょうか。

そして、友紀さん、優子さん、この時期のフィリピンで日中35度を越す暑さの中、自らもプレーし、声を出しながらBinibiniたちの向上のために必死に考え、コーチングする姿はとても素敵でした。お二人がアルティメットを広めたい、そのために日本代表も、フィリピン代表も一緒に頑張ろうというメッセージは確実に彼女たちに届いたと思います。

クリニックの後に食事をして話をしたり、ゲームをしたり、ここでは書ききれないたくさんのこともありました。6月の世界大会での再会がお互いに楽しみですね。我々も両チームの活躍を心から応援したいと思います。お疲れ様でした!

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Global Athlete Project
多くの日本人がスポーツを通じて外国語のコミュニケーションスキルを身につけ、世界を舞台に活躍することを応援しています。

World Ultimate and Guts Championships 2016
6月にロンドンで行われるアルティメットの世界大会

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