フィリピンの医学部とは?日本人が知っておくべき基礎知識

はじめに

近年、「フィリピンの医学部に進学する」という選択肢に関心を持つ日本人が少しずつ増えている。
背景には、英語で医学を学べる教育環境、欧米諸国と比べて抑えられた学費、アジア圏という地理的な近さなどがある。

一方で、フィリピンの医学部について調べ始めると、多くの人が同じ疑問に行き着く。
「フィリピンの医学部を卒業すれば、日本の医師国家試験は受けられるのか」
「将来、日本で医師として働くことはできるのか」
こうした点については、インターネット上でも情報が断片的で、誤解を招く表現も少なくない。

フィリピンと日本では、医学教育制度そのものが大きく異なる。
入学ルート、修業年限、国家試験の仕組み、そして卒業後のキャリアパスまで、日本の医学部と同じ感覚で考えると、思わぬギャップに直面する可能性がある。

本記事では、フィリピンの医学部制度の基本から、授業言語や入学条件、学費、日本人が特に注意すべきポイントまでを整理し、フィリピン医学部がどのような人に向いている選択肢なのかを客観的に解説していく。


フィリピンの医学部制度の基本

フィリピンの医学部制度は、日本の医学部とは大きく異なる点がいくつかある。
最大の特徴は、医学部が大学卒業後に進学する「大学院レベル」の教育機関であるという点だ。

日本では高校卒業後、6年制の医学部に直接進学するのが一般的だが、フィリピンではまず4年制大学を卒業する必要がある。
この学部段階では、必ずしも医学や理系専攻である必要はなく、生物学や化学系を選ぶ学生が多いものの、学校によっては文系出身者でも条件を満たせば医学部進学が可能とされている。

一般的なフィリピン医学部までの流れは以下の通りである。

  • 4年制大学を卒業

  • NMAT(National Medical Admission Test)を受験

  • 医学部(Doctor of Medicine課程)に入学(4年間)

  • 卒業後、インターンシップ(1年間)

  • フィリピン医師国家試験を受験

医学部の4年間は、前半が基礎医学、後半が臨床医学中心のカリキュラムとなっており、その後のインターン期間で病院実習を集中的に行う。
この構造は、アメリカの医学教育制度の影響を強く受けており、フィリピン医学部は「アメリカ型医学教育」に近いと言われることも多い。

そのため、「医学部=学部教育」という日本の感覚のまま制度を理解しようとすると、修業年限や進学条件、卒業後の資格の扱いについて誤解が生じやすい。
フィリピン医学部を検討する際は、まずこの制度的な違いを正しく理解することが重要となる。


フィリピンの医師国家試験は原則フィリピン人のみが受験可能

フィリピンの医学部を検討する際、日本人が特に注意すべき点のひとつが医師国家試験の受験資格である。
結論から言うと、フィリピンの医師国家試験(Physician Licensure Examination)は、原則としてフィリピン国籍を持つ者しか受験できない

フィリピンでは、医師国家試験はPRC(Professional Regulation Commission)によって管理されており、受験資格には以下の条件が含まれる。

  • フィリピンの医学部を卒業していること

  • 定められたインターンシップを修了していること

  • フィリピン国籍を有していること

この「国籍要件」は非常に重要で、たとえフィリピンの医学部を正規に卒業していたとしても、外国籍のままでは原則として医師国家試験を受験することはできない

一部では「外国人でも受験できる」「特例がある」といった情報を見かけることがあるが、少なくとも日本人留学生が一般的に想定できるルートとしては、現実的な選択肢とは言い難い
そのため、フィリピン医学部を卒業しただけで「フィリピンで医師として働ける」と考えるのは危険である。

この点を正しく理解していないまま進学を決めてしまうと、
「卒業後に医師免許が取れない」
「どの国でも医師として働けない」
という状況に陥る可能性もある。

フィリピンの医学部は、あくまで医学教育を受ける場であり、
「その国で医師免許を取得できるかどうか」は、教育とは別の制度問題であることを認識しておく必要がある。


フィリピン医学部卒業後、日本の医師国家試験は受験できるのか

フィリピンの医学部を検討する日本人が、最終的に最も気にするのが
「フィリピンの医学部を卒業すれば、日本の医師国家試験を受験できるのか」という点だろう。

結論から言うと、原則として自動的に受験資格が与えられることはない

日本の医師国家試験を受験するためには、医師法に基づき、以下のいずれかを満たす必要がある。

  • 日本の医学部(6年制)を卒業している

  • または、外国の医学部卒業者として厚生労働省の個別審査により受験資格を認められること

フィリピンの医学部卒業者は、この後者に該当する可能性を検討することになるが、ここに非常に高いハードルが存在する。

厚生労働省の個別審査の現実

外国医学部卒業者が日本の医師国家試験を受験するためには、厚生労働省による書類審査・内容審査が行われる。
この審査では、以下の点が厳しくチェックされる。

  • 修業年限が日本と同等であるか

  • 基礎医学・臨床医学の履修内容

  • 実習時間・実習内容

  • 卒業後の研修制度

  • 教育水準が日本の医学部と同等と認められるか

フィリピンの医学部は、制度上「大学卒業後+医学部+インターン」という構造を取っているため、書類上の年限は満たしているように見える場合もある。
しかし、それがそのまま日本の基準と同等と判断されるとは限らない

実際には、

  • 追加の補習

  • 日本の医学部での再履修

  • 実質的に受験資格が認められない
    といったケースも多く、「フィリピン医学部卒業=日本の医師国家試験受験可」と単純に考えることはできない。

「前例がある」という情報の危うさ

インターネット上では、「フィリピン医学部卒業後に日本で医師になった人がいる」といった情報が見られることもある。
しかし、仮に前例が存在したとしても、それは個別の条件・時代背景・審査結果による例外的なケースである可能性が高い。

制度は固定されたものではなく、審査基準も年々厳格化される傾向にある。
そのため、過去の事例を前提に「自分も同じルートで行ける」と判断するのは極めて危険だ。

日本で医師になることを前提にするのはリスクが高い

以上を踏まえると、
「将来は必ず日本で医師として働きたい」という目的を持つ人にとって、フィリピン医学部は非常にリスクの高い選択肢と言える。

フィリピン医学部は、

  • 海外医療

  • 国際的なキャリア

  • 日本以外の進路
    を視野に入れた場合に初めて検討価値が出てくる選択肢であり、日本の医師免許取得を前提に安易に選ぶべきものではない。


結局のところ「フィリピン人になる」以外に現実解はあるのか

フィリピンで医師になるための絶対条件

フィリピンで医師として診療行為を行うには、

  • フィリピン医学部卒業

  • インターン修了

  • フィリピン医師国家試験合格

が必須です。そしてこの国家試験には、

原則としてフィリピン国籍が必要

という壁があります。

つまり、

  • 医学部を卒業しても

  • 能力があっても

  • 英語ができても

国籍がなければ医師免許に辿り着かない、という制度設計です。


「じゃあ国籍取得すればいいのでは?」という話

理屈としてはその通りで、

フィリピン国籍を取得する(=フィリピン人になる)

という選択肢は、制度上は存在します。

ただし、ここで重要なのは:

  • フィリピンは原則二重国籍を認めない

  • 日本も原則二重国籍を認めていない

  • → 実質的に日本国籍を離脱する覚悟が必要

という点です。

これはもはや「留学」や「キャリア選択」の話ではなく、
人生設計・国籍選択レベルの決断になります。


現実的に見た場合

実務的に見ると、

  • 日本国籍を保持したまま

  • フィリピン医学部を卒業し

  • フィリピンで医師として働く

というルートは、ほぼ成立しません

そのため、

  • フィリピン医学部 → フィリピンで医師
    を本気で成立させたいなら、
    「フィリピン国籍取得を視野に入れる」以外に、確実な道はないと言って差し支えないです。


ここが一番大事なポイント

多くの誤解は、

  • 医学部に入ること

  • 卒業すること

と、

  • 医師免許を取得すること

別物であるという点が、十分に説明されていないことから生じています。

フィリピン医学部は
「医師になるための教育機関」ではありますが、
外国人がその国で医師資格を取れる設計にはなっていない、というのが現実です。


まとめ:フィリピン医学部は「医師になる近道」ではない

フィリピンの医学部は、英語で医学を学べる環境や比較的抑えられた学費など、一見すると魅力的に映る要素が多い。
しかし、日本人が進学を検討する際には、制度上の現実を冷静に理解しておく必要がある。

まず、フィリピンの医師国家試験は原則としてフィリピン国籍保持者しか受験できない
そのため、日本国籍のままでは、フィリピンの医学部を卒業しても、フィリピンで医師免許を取得し、医師として働くことはできない。

また、日本の医師国家試験についても、フィリピン医学部卒業者が自動的に受験資格を得られるわけではなく、厚生労働省による個別審査という高いハードルが存在する。
「海外医学部を卒業すれば、日本でも医師になれる」という単純な構図は成り立たない。

結局のところ、
フィリピンで医師として確実に成立させる道は、フィリピン国籍を取得するという人生レベルの選択を伴う
これは留学や進学の延長線上で軽く決断できるものではない。

フィリピン医学部は、

  • 医学を英語で学びたい人

  • 国際医療や研究、医療関連分野でのキャリアを視野に入れている人

  • 医師免許取得以外の出口も含めて進路設計ができている人

にとっては検討の余地がある選択肢だ。

一方で、
「将来は日本で医師になりたい」「医師免許取得が最優先」という人にとっては、極めてリスクの高い進路であることは否定できない。

フィリピンの医学部を選ぶかどうかは、
「どこで、どの資格で、どんな医療キャリアを築きたいのか」
という問いに、明確な答えを持てるかどうかで判断すべきだろう。


フィリピンの医学部進学・卒業で日本の医師国家試験は受験できるのか?

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