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フィリピンの医学部進学・卒業で日本の医師国家試験は受験できるのか?
近年、当校の英語サイトへのアクセスが急増しており、特に「フィリピン 医学部」「セブ島 医学部」といった検索流入が顕著に増えています。
そうした背景の中で、フィリピン・セブ島で医療系学部として高い知名度を持つサウスウェスタン大学(Southwestern University PHINMA)との提携が正式に決定したことを受け、本記事を執筆することになりました。
筆者自身は、コロナ前にサウスウェスタン大学医学部(MD課程)に実際に進学し、諸事情によりわずか1週間で自主停学した経験があります。また、医学部入学要件である NMATでは70パーセンタイル以上を取得しています。
今回はその実体験を踏まえ、
- フィリピンの医学部とは何か
- サウスウェスタン大学医学部の実情
- 卒業後、日本の医師国家試験を受験できるのか
- 現実的な進路選択とは何か
について、制度面・実務面の両方から詳しく解説します。
結論:日本の医師国家試験は「受験可能」だが、現実的には極めて厳しい
結論を先に述べます。
フィリピンの医学部を卒業後、日本の医師国家試験を受験することは制度上は可能です。
ただしそのルートは、
「医師国家試験予備試験(いわゆる予備試験ルート)」
を通る必要があり、難易度・学習量ともに非常に高いのが現実です。
日本語での試験、かつ日本の医学教育を前提とした出題内容であるため、
- 最低でも 2〜3年
- 場合によっては それ以上
の追加学習期間が必要になると考えられます。
フィリピンの医学部を卒業できるほどのバイタリティがあれば「理論上は不可能ではない」ものの、
時間・コスト・精神的負担を考えると、最初から日本の医学部を目指す方が合理的です。
フィリピンの医学部とは?
フィリピンの医学部は、日本と異なりアメリカ型のメディカルスクール制度を採用しています。
基本構造
- 4年制大学(学士課程)を卒業
- その後、医学部(MD課程)へ進学
つまり、
4年(学部)+4年(医学部)=合計8年
という進学モデルになります。
日本の6年制医学部と比べると、
「最短で医師になる」という点では明らかに遠回りです。
年齢層の特徴
- 進学者の中心は 20代後半〜30代
- 社会人経験者も多く、40代・50代、まれに60代の学生も在籍
「社会人から医師を目指す」文化がある点は、日本との大きな違いです。
入学条件
- 大学卒業資格
- NMAT(National Medical Admission Test)
- 最低基準:40パーセンタイル
- 有名大学ほど高得点を要求
学力面のハードルは決して高くありませんが、
日本人にとって最大の壁は英語です。
サウスウェスタン大学医学部(Southwestern University PHINMA)とは?
サウスウェスタン大学は、現在
Southwestern University PHINMA
が正式名称です。
大学の背景
- もともとセブ島では医療系学部に強い伝統校
- 経営悪化により一時ブランド力が大きく低下
- 2015年にPHINMA教育グループが買収
- 以降、施設投資・教育体制が改善
近年では、
- 医師国家試験
- 看護師国家試験
の合格率も上昇し、ブランド力は回復傾向にあります。
外国人学生について
- かつては外国人向けに 1.5年制 BS Biology コースを設置
- 主にインド人留学生を多数受け入れていた
- 現在はこのコースは廃止
- 大学卒業資格がないと医学部進学不可
※この点は 2016年1月時点の最新情報です。
現在、医学部の外国人学生は
1学年あたり約100名程度とされています。
NMAT(National Medical Admission Test)とは?
NMATは、フィリピンの医学部(MD課程)に進学するための全国統一試験です。
概要
- 対象:フィリピン人・外国人
- 評価方式:パーセンタイル(%)
- 医学部ごとに最低基準あり
試験内容
Part 1
- 言語能力(英語)
- 数的能力
- 論理的思考
Part 2
- 生物
- 化学
- 物理
- 社会科学
筆者自身のNMAT体験談
筆者は2017年8月、
**NMAT Waiver(1年以内に40%取得条件)**でサウスウェスタン大学医学部に入学しました。
実際にNMATを受験したのは
2017年10月22日。
結果は 72パーセンタイル。
理系科目(計算・物理・IQテスト系)は得意でしたが、
- Verbal(英語)
- 生物
この2科目が大きく足を引っ張りました。
正直な感覚として、
英語と生物をしっかり対策すれば
90パーセンタイルは決して難しくない
と感じています。
今後は医学部進学サポート事業の強化に合わせ、
- NMAT再受験
- NMATオンライン講座の立ち上げ
も検討しています。
フィリピン医学部卒業後の進路について
日本で医師になるルート
- 医師国家試験予備試験ルートのみ
- 合格率は低く、学習負担が非常に大きい
- 海外医学部卒の合格率は 50%未満 というデータもある
筆者自身の判断
筆者は妻がフィリピン人であるため、
- 将来的な 帰化(Naturalization)
- フィリピン人医師としてのキャリア
も視野に入れていました。
医学部3年次あたりで帰化申請を行う想定でしたが、
- 医学部卒業まで4〜5年
- さらに日本国家試験対策で2〜3年
という人生設計が現実的に描けず、進学を断念しました。
アメリカの医師国家試験(USMLE)は受験できない
よくある誤解ですが、
日本人がフィリピンの医学部を卒業しても、USMLEの受験資格は基本的にありません。
フィリピン人学生の多くがUSMLEを目指しているため誤解されがちですが、
- ECFMG認証
- 学歴要件
- 国籍・教育背景
これらの条件を、日本人留学生は満たせないケースがほとんどです。
① 最大の壁:ECFMG認証の問題
USMLEを受験するには、
**ECFMG(米国の外国医学部卒業生認証機関)**の認証が必須です。
問題点
- フィリピンの医学部の多くは
ECFMGが要求する条件を満たしていない - 特に問題になるのが:
- 入学要件
- 教育課程の構造
② フィリピン医学部の「入学条件」が合わない
アメリカ基準では:
- 医学部入学前に4年制大学(プレメッド)卒業が必須
しかしフィリピンでは:
- NMAT合格+学士号があればOK
- 日本人留学生の場合
アメリカ基準の「Pre-Med相当」と認められないケースが多い
→ ECFMGが「医学部入学資格が不十分」と判断する
③ カリキュラムがUS基準と一致しない
- 臨床実習の時間・形式
- 病院の教育体制
- 評価方法(症例数・指導医体制)
これらが
アメリカ医学部基準に完全に適合しないと判断されやすい。
④ 卒業=USMLE受験資格ではない
よくある誤解ですが:
- ❌「海外医学部を卒業すればUSMLEを受けられる」
- ⭕「ECFMGが認めた医学部・条件を満たした卒業生のみ」
フィリピン医学部卒の日本人は
この条件を満たせないケースが大半です。
⑤ 仮に受験できても「その先」がほぼ不可能
仮に奇跡的に:
- Step 1・2 合格しても
次に必要なのは:
- アメリカでのレジデンシー(研修)マッチ
ここで:
- フィリピン医学部卒
- 非米国籍
- 非英語圏バックグラウンド
→ ほぼマッチしないのが現実
まとめ(超重要)
制度上の結論
フィリピン医学部は
「アメリカで医師になるためのルートとして設計されていない」
だから
- フィリピン医学部 → フィリピン医師
- フィリピン医学部 → 日本医師国家試験
には向いているが
USMLE目的ではほぼ詰む
まとめ:フィリピン医学部は「日本で医師になる近道」ではない
- フィリピン医学部は 入学は容易
- 卒業は 極めて困難
- 日本の医師国家試験とは 制度・カリキュラムが噛み合わない
日本で医師になりたいなら、日本の医学部が最短かつ最善
これが、実体験を踏まえた率直な結論です。
