2025/06/5
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フィリピン移住者や留学経験者の中には、「いつかセブでカフェやレストランをやってみたい」と考える人も少なくありません。しかし、フィリピンの法律において飲食業は、外国人による直接出資・所有が厳しく制限された分野に含まれています。
具体的には、フィリピン政府が定める「Foreign Investment Negative List(FINL)」において、小売業(Retail Trade)や飲食業(Restaurant, Food Service Business)などは「国民専用業種(Reserved for Filipinos)」に分類されており、外国人は株式を1%たりとも保有することができません。
つまり、レストランやカフェなどを開業したい場合、法人の100%をフィリピン人名義にしなければならないというのが法律上のルールです。
これを知らずに進めてしまうと、後から登記ができなかったり、違法と判断されてビジネスが継続できなくなるリスクもあります。
また、建前上はフィリピン人オーナーでも、実際には日本人など外国人が資金を出して運営しているケースもあります。こうした構造は「Nominee Structure(名義貸し)」と呼ばれ、フィリピン政府も過去に複数の摘発を行ってきたグレーゾーン行為とされています。
このような背景から、フィリピンで飲食店を開業したい外国人は、まず法律の制限とリスクを正しく理解する必要があります。単純に「現地の友人の名義で始めよう」というだけでは済まされないほど、フィリピンの外資規制はシビアなのです。
では、まったく道がないのか?というと、そうではありません。後半では、実際に多くの外国人が選択している「合法的な関与方法」や「配偶者がフィリピン人である場合の可能性」について解説します。
◆ 通常の原則(Negative List)
フィリピンでは、「外国人は飲食業を含む特定の業種において最大40%までしか出資できない」というルールがあります。これは「Foreign Investment Negative List」のPart Aに記載されており、**マイクロ・スモールビジネス(資本金未満3百万ペソ)**なども禁止対象です。
◆ ただし例外あり:Minimum Paid-in Capital USD200,000超の場合
✅ 条件を満たすと100%出資が可能
以下のような条件を満たす場合、外国人が飲食業(レストラン等)を100%所有する法人を設立することが可能です。
条件 | 内容 |
---|---|
最低資本金 | USD 200,000以上(≒ 約1,200万ペソ以上) |
雇用要件 | 最低50人以上の直接雇用 or 高度な技術・専門性が必要な業種の場合は10人でも可能なことも |
業種 | 通常、飲食業も含まれる(明示的に禁止されていない) |
許認可 | DTI、SEC、LGU(市役所)、BIRなどの通常の設立プロセスを経る必要あり |
✅ その他条件:
出資者が外国人1名だけでもOK(法人も可)
レストラン名義は外国法人でも個人でも可能
特に都市圏ではこの形でのレストラン設立実績が多数あり
✅ 参考:関連する法制度・文書
Foreign Investment Negative List(最新版)
最新リストで「レストラン単体」は禁止されていないため、条件さえ満たせばOK
Retail Trade Liberalization Act (RA 11595)
一部の小売業(レストラン含む)も外国人100%出資が条件付きで許可されている
✅ 注意点とアドバイス
注意点 | 解説 |
---|---|
最低資本金はBSP登録が必要 | 実際にUSDで持ち込んだ証明が必要。通帳だけでは不可 |
追加ライセンス | 飲食業の場合、Sanitary PermitやBFAD登録、Fire Safetyなど多数の許可が必要 |
税務監査 | 外国人が100%出資の法人はBIRからの監査が比較的厳しい傾向あり |
✅ まとめ
✅ 外国人100%出資でレストラン設立するには… |
---|
◉ 資本金 20万ドル以上(≒1,200万ペソ以上) ◉ 正規の法人設立とBIR登録 ◉ 必要に応じて50人以上の雇用か、高度専門性の証明 ◉ 必要な各種許認可を取得 |
フィリピンの外資規制により、飲食業の株式を外国人が保有することはできませんが、それでも実際には多くの外国人が間接的に飲食ビジネスに関わっています。ここでは、実務的に選ばれている主な3つの方法を紹介します。
もっとも合法性が高く、安定して経営に関われるのがこのケースです。フィリピン人の配偶者が事業主として法人を設立し、外国人配偶者はアドバイザーやオペレーションマネージャーとして関わる形です。
Hide君のように、実際に家庭を持ち、現地に根差して生活している場合は、資金や経営ノウハウを活かしながら、表面上は「夫婦経営」の形を取ることができるのが強みです。
親しい友人やビジネスパートナーに株式の100%を持たせ、別途「マネジメント契約」「収益分配契約」などで実質的な関係性を明文化するパターンです。
ただし、これには深い信頼関係が前提となり、契約の法的効力にも限界があります。後々のトラブル回避のためには、弁護士の立会いや契約書作成が不可欠です。
法人を持たず、フィリピン人オーナーのもとで**「マネージャー」「ブランディング責任者」「顧問」として雇われる形**で関与するケースもあります。
この場合、外国人ビザ(Special Work Permitや9Gビザなど)の取得が必要となりますが、株主としては関わらないため、法的にはクリアです。
これらの方法を選ぶ際は、現地の法律事務所やコンサルタント、信頼できる行政書士レベルのパートナーと相談しながら進めることが非常に重要です。
「知らなかった」では済まされないリスクもある一方で、しっかり制度と向き合えば、フィリピンでも飲食ビジネスを楽しむチャンスは十分にあるのです。
内容:セブ市内で「Abaca Baking Company」「Abaca Boutique Resort」「Phat Pho」などの複数ブランドを展開。
特徴:高級志向かつ安定した品質、観光客・地元富裕層に大人気。
成功要因:ローカル人材の徹底トレーニングと、外国人オーナーによるブランド管理。
内容:イタリアンスタイルのピザ専門店。メトロマニラで大人気。
特徴:フィリピン人と外国人のパートナーシップ型で展開。
成功要因:本場の味+合理的な価格帯+好立地。
内容:博多系とんこつラーメンの有名店。Hide君が関係している店舗。
特徴:日本人による味の監修、マーケティングや接客のローカライズ。
成功要因:本物の日本品質 × ローカルニーズのマッチング。
内容:ブランチ・ベーカリー系のレストランチェーン。BGCを中心に複数展開。
特徴:米国式のカフェ文化をそのまま導入。
成功要因:ローカル中間層〜富裕層をターゲットにしたブランド戦略。
✅ 成功の共通点
ポイント | 解説 |
---|---|
ターゲティング | ローカル富裕層や外国人駐在員・観光客層にフォーカス |
本物の味の再現 | 本国と同等、またはローカル好みに応じた味の調整 |
ローカル人材の活用 | 現地スタッフとの協業・トレーニングによるオペレーション安定 |
立地 | セブ、マカティ、BGCなどの都市部一等地を選定 |
マーケティング | SNS・口コミでのプロモーションが鍵(Instagram、Facebookなど) |
✅ 注意点と補足
外国人100%出資で開業している例は、20万ドル以上の資本金+法的な条件クリアが前提。
パートナーシップ型(フィリピン人との共同名義)で営業しているケースも多数。
地元の「LGU(市役所)」の理解や支援も重要。
QQ English(日本人創業)
創業者:藤岡頼光氏(元プロボクサー)
特徴:セブに2つの大型キャンパス(ITパーク、シーフロント)、500名以上のフィリピン人講師を雇用。
成功要因:日本国内での需要喚起、法人研修の獲得、フィリピン人講師の質の高さ
CPI(韓国人経営)
韓国系資本による学校で、韓国〜ベトナム〜台湾市場に強い
成功要因:清潔感と施設レベルの高さ、スパルタ系のカリキュラム設計
KMC Solutions(アメリカ人/フィリピン人の合弁)
高級コワーキングスペースやBPO支援を提供
成功要因:外資企業向けの英語BPO需要と、ITパーク・BGC等の一等地展開
Monstar Lab Cebu(日本)
日本のモンスターラボがセブに開発拠点を構築
成功要因:日本の案件をフィリピンの人件費で高品質にアウトソース可能
Harolds Hotel(韓国資本)
韓国企業が経営する中上級ホテル。観光客とビジネス客の両方を取り込む。
成功要因:清潔・高サービスの韓国式運営とフィリピン人スタッフの融合
アクア・クエスト(日本人経営)
セブ・モアルボアルなどでダイビングショップ運営
成功要因:日本人観光客への安心感、PADI資格を持つ現地インストラクターの育成
Brighter Bee(オーストラリア系)
セブに拠点を持つWeb制作・マーケ会社。英語圏企業向けに英語ネイティブのコピーライティング+格安開発体制を提供
成功要因:コスト競争力とフィリピン人の英語力、柔軟な運営
外国人がフィリピンで成功するには、以下の条件が重要です:
現地ニーズとのマッチ(例:英語教育、ITアウトソーシング、食の多様性)
信頼できるローカルパートナー
現地人スタッフの教育と信頼構築
外国人としての強み(品質・信頼・ブランド)を活かす戦略
フィリピンで会社を立ち上げ、長期的に安定した経営を行うには、法制度や資本金、許認可の準備といった「手続き面」の整備だけでは不十分です。むしろ本質的に重要なのは、**「人間関係」と「生活基盤」の2つをいかに築くか」**にかかっています。具体的には、以下の2点が成功の鍵を握っています。
フィリピンでは、多くの業種において外国人の100%出資が制限されており、フィリピン人の名義人(パートナー)を立てる必要があります。これは法的な要請であると同時に、現地ビジネスの成功・失敗を左右する極めて実務的な課題でもあります。
名義だけを借りる「名義貸し(Nominee)」は、法的リスクが大きく、万が一トラブルが起きた際には全ての財産を失う可能性すらあるため、絶対に避けるべきです。
代わりに、「パートナーとして本気で一緒にビジネスを成長させたい」と思えるような人物を、慎重に、そして時間をかけて選ぶことが不可欠です。
信頼できるパートナーとは、単に法的な名義を預けられる相手ではなく、
法律・会計などの基礎知識を持っている
自身の役割と責任を理解し、業務に主体性を持つ
約束を守り、金銭的に誠実な人物
こうした資質を備えた人物です。
長期的には、ビジネスの成長だけでなく、フィリピン社会での立ち位置や行政とのやり取りもパートナーの「人格」が成果を左右することになります。
もう一つの成功要素が、「現地に住むこと」です。
観光ビザで行ったり来たりするだけでは、フィリピンの現場の空気感、労働観、行政手続きのタイム感、スタッフの価値観といった「肌感覚でしかわからない経営判断材料」が得られません。
また、外国人として会社を経営する際、「いつでも現地にいて対応できる」という事実が、行政や従業員からの信頼に直結します。
特にフィリピンでは、「経営者が現場に顔を出すこと」が今なお重視されており、スタッフのモチベーションや離職率にも影響を与えます。
さらには、近所の役所、税務署、取引先との人間関係の構築においても、物理的な距離感は信用そのものに影響します。
生活拠点を現地に構えることで、経営のスピードと柔軟性が格段に上がり、「困ったときにすぐに動ける」ことが大きな信頼を生みます。
フィリピンで外国人が起業して成功するためには、制度理解・資本・ビジネスモデル以上に、「誰と組むか」「どこで生きるか」がすべての土台になります。
法律のグレーゾーンを避け、クリーンで信頼ある経営を実現するために、信頼できるパートナー選びが最優先事項
変化と対応が早い現地ビジネス環境の中で、生きた経営判断を下すために、現地に生活拠点を置くことは必須条件
これらをしっかり整えることができれば、フィリピンという成長市場で、外国人であっても十分にビジネスを成功させることが可能です。
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