2025/06/5
目次
〜「甘く見ていた…」では済まされない、制度・文化・人間関係が絡むフィリピン起業の落とし穴〜
✅ はじめに:なぜ外国人起業家は失敗しやすいのか?
フィリピンは物価の安さや英語環境、多様なビジネスチャンスから「起業しやすい国」と思われがちです。しかし、現地の法制度、文化、人間関係の複雑さを軽視した結果、撤退や損失を招くケースは後を絶ちません。
ここでは、実際に多くの外国人が陥った「典型的な失敗5選」を紹介し、それをどう避けるべきか、現地経営者視点で解説します。
〜「人柄が良いから大丈夫」は、最大の落とし穴〜
ケース:
セブで知り合ったフィリピン人の友人や恋人、または現地の紹介者を「この人なら信頼できそう」という理由だけで名義人(Nominee)に選んでしまった。契約書の整備も不十分なまま法人を設立し、事業をスタート。
起こりうる問題:
ビジネスが軌道に乗ったタイミングで「この会社は私のものだ」と主張される
銀行口座や営業許可の名義が本人であることを盾に、外国人オーナーを排除
パートナーが変わった、家族と揉めた、という**“個人的な事情”**がビジネスに影響
名義人の借金・トラブルが法人の信頼を損なう要因に
失敗の本質:フィリピンの法律は“フィリピン人を守るためのもの”
ここで絶対に忘れてはいけないのが、フィリピンの法制度はフィリピン国民を守ることを前提に設計されているという事実です。
外国人であるあなたが、いくら資本を出し、実務を担っていても、**登記上の名義がフィリピン人である限り、法的には“あなたの会社ではない”**という扱いになります。
つまり、信頼していた名義人に裏切られても、「自分が実質的オーナーだ」という主張は法律上通用せず、裁判になっても圧倒的に不利な立場に立たされるのが現実です。
失敗回避のポイント:
契約書(MOA:Memorandum of Agreement)は必須。資本の実質的出資者、利益配分、経営権、撤退時の条件などを明文化する
弁護士による**公証(Notarization)**を必ず実施し、裁判でも有効となる形にしておく
名義人は**“人柄”ではなく、“リスク管理の仕組み”でカバー**する意識を持つ
第三者の関与(弁護士・公認会計士・信頼できるブローカー)を通じて、トラブルを未然に防ぐ体制を構築する
現地のリアルな声:
「まさか10年来の友人に裏切られるとは思わなかった。でも、“名義が向こう”という事実は、どうにもならなかった」
── 元レストランオーナー / セブ島(2022年)
✅ 結論:信頼ではなく、契約と構造で自分を守れ
フィリピンで起業するということは、ルールが異なるゲームに挑戦するということ。
そのフィールドでは、感情ではなく論理、信頼ではなく契約で、自分自身とビジネスを守る姿勢が必要不可欠なのです。
〜「専門家に任せているから安心」が通用しないフィリピンの現実〜
ケース:
フィリピンで会社を立ち上げた後、現地で紹介された会計士や税理士にすべての税務処理を一任。経理や申告については「プロがやってくれているだろう」と思い込み、内容確認や報告チェックを一切行わなかった。
起こりうる問題:
実は税金が未申告・未納だった
Annual RegistrationやVAT登録が放置され、後から罰金請求
帳簿や領収書の提出義務が守られておらず、監査で致命傷に
会計士と連絡が取れなくなる or 退職して音信不通
名義人や現地職員とグルになって着服されるパターンも
失敗の本質:フィリピンでは“任せっきり”が最大のリスク
日本では会計士や税理士は国家資格者であり、基本的に高い倫理観と職業責任が求められます。
しかしフィリピンでは、「会計士」や「税理士」を名乗っていても、実務能力や責任意識には大きなバラつきがあります。
たとえば:
期限を過ぎても平気で放置する
申告漏れが発覚しても謝罪せず、オーナーの責任にする
契約の範囲外と主張して手を引く
このようなケースは決して珍しくありません。「お金を払っているからちゃんとやってくれるはず」という発想は、通用しない国なのです。
失敗回避のポイント:
会計士とは必ず「書面契約」で対応範囲と報酬を明文化する
月1回の提出書類・申告状況をメールで報告してもらう体制を構築
納税の証明(OR, Form番号, 日付)を必ず確認・保存する習慣を持つ
万が一に備えて、別の専門家に定期的なセカンドチェックを依頼できるようにしておく
現地のリアルな声:
「税理士に払ったはずの税金が、実は納税されていなかった。ペナルティを含めて倍額請求された」
── オンラインスクール運営 / マニラ(2023年)
✅ 結論:任せるのではなく、“一緒に運営する”感覚が必要
会計士や税理士はあなたの代理人ではありますが、あなたの責任を肩代わりしてくれる存在ではありません。
“信頼して任せる”のではなく、“監督し、確認し、共に動かす”姿勢こそが、海外ビジネスでの生存戦略です。
〜“利益が出ているはず”なのに、なぜか現金が足りないという悲劇〜
ケース:
「売上は好調だし、黒字経営のはず」と思っていたが、数ヶ月後に突然、家賃・給与・税金が払えない状態に。支払いを先延ばしにしたり、無計画に出費していたため、いつの間にか現金が枯渇していた。
起こりうる問題:
毎月の税金・SSS・PhilHealth等の支払いが滞り、罰金が発生
スタッフの給与遅延で信頼失墜、離職者続出
家賃や仕入れ先への支払いが滞り、強制退去や納品停止
外注費や広告費などを確保できず、売上減少のスパイラルに
失敗の本質:利益と現金は別物
日本でもありがちな誤解ですが、「帳簿上の黒字=現金がある」ではありません。
特にフィリピンでは、以下のような特性によりキャッシュフロー管理がより難しくなります:
VATやPercentage Tax、Withholding Taxなどの**“事前納税”文化**
小切手払い、後払いなどによる**“入金の遅れ”**
店舗改装・申請手続きなどの初期費用が不意に膨らむ
為替変動や輸入費用の急騰による調達コストのブレ
失敗回避のポイント:
収支予測ではなく、「現金の動き」で計画を立てる
月次で現金収支を見直し、3ヶ月先までの資金繰り表を作成
仕入れ・支払い・納税をカレンダーで見える化&分散化
売上の一部は別口座に取り分けて“納税用”として死守
「余裕がある時ほど節約を意識する」というマインドセット
現地のリアルな声:
「利益が出ていたのに、なぜか常に手元にお金がなかった。知らず知らずのうちに税金や給与が遅れ始め、信頼もビジネスも崩壊した」
── 飲食店オーナー / セブ島(2022年)
✅ 結論:起業初年度は“利益”より“現金残高”を追え
フィリピンでは予想外の出費が日常茶飯事です。「売上よりも、現金の余力があるかどうか」が経営の成否を分けます。
事業を守るのは、華やかな売上報告ではなく、静かに残るキャッシュバランスなのです。
〜ビジネスモデルは正しくても、人間関係で崩壊する現実〜
ケース:
日本での成功モデルをそのままフィリピンに持ち込み、効率性・時間厳守・数字管理などをスタッフにも徹底しようとしたが、現地スタッフとの関係が崩壊。離職者が相次ぎ、マネージャーとも衝突。結果としてビジネスそのものが機能しなくなった。
問題の本質:価値観が違う=伝え方も変えるべきだった
フィリピンでは、「人との関係性」や「気持ちへの配慮」が非常に重視されます。
外国人オーナーが数字やルールだけを重んじすぎると、スタッフはこう感じます:
「この人は自分たちを機械だと思っている」
「怒ってばかりで、全然リスペクトがない」
「文化の違いを理解しようともしない」
さらに、以下のような現地特有の価値観も摩擦の原因になります:
項目 | 日本の感覚 | フィリピンの感覚 |
---|---|---|
遅刻 | 原則NG(数分でも謝罪) | 数十分の遅れは日常茶飯事 |
休日 | 原則出勤、代休調整 | 祝日・宗教行事は絶対優先 |
仕事観 | 組織のために頑張る | 家族や自分のために働く |
給与交渉 | 年次評価で調整 | 「今すぐ上げて」が日常 |
「郷に入っては郷に従え」を忘れた代償
多くの外国人経営者が語る失敗談に共通するのが、
「スタッフがついてこなかった」
「思ったように動いてくれなかった」
という“人間面の崩壊”。
これらは、ビジネスの戦略ミスというよりも、文化理解の欠如によるコミュニケーションミスなのです。
回避策:文化に“適応”する姿勢を持つこと
最初から「日本式」は通用しない前提で制度設計
勤怠や評価は現地基準と折衷案でルール化
スタッフの家族や宗教行事への配慮を明文化
“怒る”より“教える”を重視したマネジメント研修
英語だけでなくタガログ語での挨拶や会話も積極的に
現地のリアルな声:
「最初のオーナーは、完璧を求めすぎてすぐ怒鳴った。私たちは萎縮して何も言えず、すぐ辞めた」
── 元スタッフ / ケソン市(2023年)
✅ 結論:フィリピンでの成功は“文化への理解”から始まる
どんなに素晴らしい商品やサービスがあっても、現地の人に受け入れてもらえなければ、ビジネスは成立しません。
**“相手を変える前に、まずは自分が理解する”**という姿勢が、信頼を得て、長く続く経営の第一歩となります。
〜“みんなやってるから大丈夫”が命取りになる現地税務のリアル〜
ケース:
「現地では領収書なんて出してる店は少ないし、自分も現金売上は一部だけ記帳しておけばいい」と甘く見ていた結果、BIR(税務署)の抜き打ち監査を受けることに。
帳簿・レシートに不備があり、3年分の追徴課税+罰金を科され、事業の継続が困難に。
問題の本質:小さな不正でも“証拠”が残ればアウト
「レジの金額を少し少なく書く」「家族への支払いを経費に入れる」「バイト代を帳簿に載せない」など、些細に見える行為も、**税務署にとっては“脱税”**です。
しかも、以下のような“きっかけ”で調査対象になるリスクがあります:
SNS・POSデータ・デリバリーアプリの売上と帳簿が乖離
近隣店舗や元従業員からの通報
OR(公式領収書)の発行履歴が少ない
会計士の登録先で不自然な処理としてフラグが立つ
✅ 補足:フィリピンでは「告発文化」もある
特に現地スタッフや取引先とのトラブルがあった場合、匿名通報されてBIRに監査依頼が入るケースもあります。
回避策:「ばれなければいい」ではなく「仕組みで整える」
ORは必ず全取引で発行し、売上管理と紐付けておく
経費は領収書・用途・日付・相手名を明記し保管
会計士任せではなく、自分で月次報告をチェックする
売上や経費の帳簿と実務を常に一致させる
現金支出は小口現金表や専用帳簿で記録を残す
✅ フィリピンの税務署(BIR)は“甘くない”
OR未発行 → 最大25,000ペソの罰金+営業停止
申告漏れ → 3年間の遡及+20%の延滞利息+罰金
帳簿の不備 → 全経費否認、所得税再計算の可能性
実際の事例:
「SNSで話題になってたレストランが、帳簿上は赤字だったってことで調査された。店閉めて帰国したらしいよ」
── 現地日本人経営者談
✅ 結論:「みんなやってる」は通用しない。自分の店は“例外”にしないこと
小さなごまかしが、やがて数十万ペソの追徴課税+営業停止+信頼喪失に繋がる。
「法律を守る」ではなく、「守れるように設計する」。
これが、フィリピンのビジネスで生き残るための現実的な考え方です。
〜“みんなやってるから大丈夫”が命取りになる現地税務のリアル〜
ケース:
「現地では領収書なんて出してる店は少ないし、自分も現金売上は一部だけ記帳しておけばいい」と甘く見ていた結果、BIR(税務署)の抜き打ち監査を受けることに。
帳簿・レシートに不備があり、3年分の追徴課税+罰金を科され、事業の継続が困難に。
問題の本質:小さな不正でも“証拠”が残ればアウト
「レジの金額を少し少なく書く」「家族への支払いを経費に入れる」「バイト代を帳簿に載せない」など、些細に見える行為も、**税務署にとっては“脱税”**です。
しかも、以下のような“きっかけ”で調査対象になるリスクがあります:
SNS・POSデータ・デリバリーアプリの売上と帳簿が乖離
近隣店舗や元従業員からの通報
OR(公式領収書)の発行履歴が少ない
会計士の登録先で不自然な処理としてフラグが立つ
✅ 補足:フィリピンでは「告発文化」もある
特に現地スタッフや取引先とのトラブルがあった場合、匿名通報されてBIRに監査依頼が入るケースもあります。
回避策:「ばれなければいい」ではなく「仕組みで整える」
ORは必ず全取引で発行し、売上管理と紐付けておく
経費は領収書・用途・日付・相手名を明記し保管
会計士任せではなく、自分で月次報告をチェックする
売上や経費の帳簿と実務を常に一致させる
現金支出は小口現金表や専用帳簿で記録を残す
✅ フィリピンの税務署(BIR)は“甘くない”
OR未発行 → 最大25,000ペソの罰金+営業停止
申告漏れ → 3年間の遡及+20%の延滞利息+罰金
帳簿の不備 → 全経費否認、所得税再計算の可能性
実際の事例:
「SNSで話題になってたレストランが、帳簿上は赤字だったってことで調査された。店閉めて帰国したらしいよ」
── 現地日本人経営者談
✅ 結論:「みんなやってる」は通用しない。自分の店は“例外”にしないこと
小さなごまかしが、やがて数十万ペソの追徴課税+営業停止+信頼喪失に繋がる。
「法律を守る」ではなく、「守れるように設計する」。
これが、フィリピンのビジネスで生き残るための現実的な考え方です。
フィリピンでの起業は、たしかに資本のハードルが低く、スピード感のある挑戦ができるマーケットです。
しかし同時に、「日本では考えられない落とし穴」が無数にあり、それに気づけるかどうかが、生き残りを左右します。
今回紹介した失敗例5選は、**どれも「やってはいけない」ではなく、「ついやってしまう」ものばかり。
そして共通しているのは、「信頼」「感覚」「常識」**といった曖昧な基準に頼ってしまう点です。
✅ 成功する人は、最初から“仕組み”で守っている
名義人とは公証付き契約書+弁護士対応
許認可は市役所だけでなく、BIR・消防・衛生まで連動管理
税務は外注任せにせず、毎月のチェックとダブル体制
マネジメントは「信用」ではなく「監視とルール」で運営
✅ “みんなやってる”は言い訳にならない世界
フィリピンの制度は不安定に見えても、BIRや監査は本気です
告発・監査・罰金・営業停止は日常的に発生しています
たとえ金額が小さくても、外国人にとっては致命的なダメージになる可能性があります
勢いだけで会社を作ることは、フィリピンでは誰でもできます。
しかしそれを**「持続可能なビジネス」に育てるためには、地に足をつけた現実的な視点と制度への対応力**が不可欠です。
「フィリピンの法律はフィリピン人を守るためのもの。外国人は、自分で自分を守らなければいけない」
この意識こそが、すべてのスタート地点です。
フィリピン留学・セブ島留学なら3D ACADEMYへ。当校では、マンツーマン授業だけでなく、「未来に繋がる留学」をテーマに、将来的に英語を活かせる様な+αの技術や経験を習得できる学校サービスをご提供しております。