2012/07/12
目次
フィリピン・セブ島で会社を立ち上げたいと思ったら、まずは「どこに行けばいいの?」「誰を通せばいいの?」「外国人でもできるの?」と疑問だらけになることでしょう。
私も、語学学校の法人設立を目指して実際に現地で登記手続きを行い、その過程で多くのハードルや予想外の展開に直面しました。日本とは違い、フィリピンでは“決まった手順”が存在しながらも、実際の対応は人や地域によって大きく異なります。担当者が変われば必要書類が変わる、そもそも言っていることが昨日と今日で違う……そんな“東南アジアあるある”を肌で感じながら、なんとか法人登記まで辿り着きました。
この記事では、私の実体験をもとに、フィリピン・セブ島での法人登記(株式会社)のプロセスをできるだけ丁寧に、リアルな感覚でお伝えします。個人事業主の登録(DTI)との違いや注意点も含め、これからフィリピンでビジネスを始めたい方、現地法人設立を検討中の方の参考になれば幸いです。
なお、繰り返しになりますが、ここで紹介する流れは**あくまで「私のケース」**です。フィリピンでは法律よりも“人”がプロセスを決めることも多く、状況は常に流動的です。とはいえ、これから現地で起業を目指す方にとって、有効な指針にはなるはずです。
フィリピンでの会社設立は、日本のように「定められた手順を順番に踏めばOK」という感覚で臨むと、まず間違いなく混乱します。私自身も「ちゃんと調べたのに、なぜか進まない」「昨日と今日で言ってることが違う」といった場面に何度も遭遇しました。
ここでは、実際に語学学校の法人登記を行った経験をもとに、フィリピンで会社を立ち上げる前に必ず知っておくべき3つの現実をご紹介します。
日本の役所では、「この手続きにはこの書類」と明確に決まっていますよね。しかしフィリピンでは、担当者によって要求される書類が違うことがよくあります。
Aという職員に「この書類が必要」と言われたので用意して持っていくと、今度はBという職員に「それじゃダメ」「こっちの書類も必要だ」と言われる…そんなことが本当にあります。
また、手続きの順番が違うことも珍しくありません。たとえば私が登記した際も、「銀行口座を先に作れ」と言われた一方で、別の弁護士からは「まずは定款を公証しないと口座は開けない」と言われる始末。最終的には、”誰の言うことを信じるか”という判断力が問われるのです。
「フィリピン」と一括りにしても、実際には市やバランガイ(最小行政区)ごとにローカルルールが存在します。
たとえばセブ市内での登記と、隣のマンダウエ市やラプラプ市での登記では、必要書類や申請窓口が異なることがあります。また、同じ「Mayor’s Permit(営業許可)」の申請でも、各市で求められる添付書類の内容やプロセスが違ったり、職員の対応が異なるケースも。
これは語学学校に限らず、飲食業、小売業、不動産などでも同様です。「〇〇市ではこれで通ったけど、△△市では無理だった」といった声は、現地では日常茶飯事です。
正直に言えば、フィリピンでの会社設立は「誰と動くか」で結果が大きく変わります。
書類が完璧でも、担当官が忙しければ1週間以上放置されることもありますし、逆に「知り合いの弁護士を通したら2日で通った」というような話もよくあります。信頼できる行政書士、弁護士、エージェントを見つけることが、成功のカギになります。
私自身も、現地で知り合ったフィリピン人から「この人を通せば早い」と紹介されたことで、滞っていたプロセスが一気に動いたことがありました。もちろん全てが“裏ルート”というわけではなく、「信頼関係があれば対応が丁寧になる」というフィリピンらしい一面とも言えます。
日本人の感覚で「順番通りにやれば誰でもできるはず」と思っていると、フィリピンの行政手続きは想像以上にストレスを感じるかもしれません。でも、こうした不確実性や柔軟さも含めて、フィリピンでビジネスをするということは、“現地の流儀”を受け入れることなのだと思います。
この先の章では、個人事業主としての登録(DTI)と、法人としての登記(SEC)について、具体的な流れを紹介していきます。
フィリピンでビジネスを始める際、まず検討されるのが「個人事業主」としての登録です。小規模なカフェ、マッサージ店、塾などの多くがこの形式で登録されており、手続きの簡単さとコストの低さが魅力です。
フィリピンにおいてこの個人事業主の登録を担当するのが、**DTI(Department of Trade and Industry/貿易産業省)**という機関です。
DTIは、企業や商業活動を監督・管理する国の省庁です。個人名義のビジネス、またはパートナーシップなどの小規模・小資本の商業活動はすべてDTIの管轄になります。
登録対象となるのは、たとえば以下のような業種です:
小規模飲食店(Carenderia)
サリサリストア(雑貨屋)
ネイル・スパ・マッサージサロン
小規模の語学チューターサービス
家庭教師、塾などの教育関連
ビジネスネーム(屋号)を持つ事業として活動する場合には、DTIでの登録が必要です。
この制度には大きな制約があります。それは、外国人はDTIにおいて事業主(代表者)になれないという点です。
つまり、外国人がフィリピンで個人事業主としてビジネスを始めるには、フィリピン人を代表として立てる必要があります。
この場合、法律上の責任者・権利保有者はそのフィリピン人となり、外国人が「実質的なオーナー」として裏から経営する形になります。
これは名義貸しにも近い状況で、信頼できるフィリピン人パートナーがいなければリスクが非常に高いです。事業が軌道に乗ってきたところで、名義人とのトラブルが起きれば、契約書があっても法的に守られない場合もあります。
登録手続きは、DTIの現地オフィス(たとえばセブシティの場合、ダウンタウンのサントニーニョ付近)にて行います。代表となるフィリピン人が下記のような書類を準備して申請します。
NBIクリアランス(無犯罪証明書)
出生証明書(Birth Certificate)
納税証明書(TIN:Tax Identification Number)
住所証明書(Barangay Clearanceなど)
これらをそろえて申請すると、1週間〜数週間程度で登録が完了します(時期や窓口の混み具合によって変動あり)。
申請時にはビジネスネーム(屋号)のチェックもあり、他と被らない名前でなければなりません。重複があると、その場で差し戻されます。
DTI登録が完了しても、それですぐに営業できるわけではありません。多くの場合、市役所やBarangay(地区役所)から現地確認が入ります。
たとえば:
本当にその住所で営業しているか
近隣に迷惑をかける業種ではないか
消防法や衛生面に問題はないか
といった観点で、担当者が事業所を訪問することがあります。申請内容と異なる実態があると、Mayor’s Permit(営業許可)の発行が遅れる/拒否されることもありますので、実際の住所や業態は正しく登録しましょう。
DTI登録は手軽で、費用も安いため、スタートアップには向いています。ただし、事業がある程度の規模になってくると、法人登記との間で税制・契約上のデメリットが出てきます。
税率が高くなる
法人契約ができない(企業間契約に不利)
融資や助成金を受けにくい
信頼性に欠ける
こういった点を見据えて、最初はDTIでスタートして、軌道に乗ったら法人化(SEC登録)へ移行するというステップを踏む経営者も多いのが実情です。
次のセクションでは、語学学校など「外国人が関わる法人」を立ち上げる場合に必要な、SEC登録による株式会社設立について詳しく解説していきます。
フィリピンで語学学校やITサービスなど、ある程度の規模と信頼性を持たせたい事業を行う場合は、株式会社(Corporation)として法人登記する必要があります。
この法人登記を所管しているのが、**SEC(Securities and Exchange Commission/証券取引委員会)**です。
日本で法人登記を行う際は、法務局を通じて行うのが一般的ですが、フィリピンではアメリカ式の仕組みが採用されており、会社法や証券関係の監督を行う政府機関がSECです。
ここで株式会社の登記、定款の提出、会社名の登録、資本金の申告などをまとめて行います。
セブ島で法人登記を行う場合、SECの現地支部はセブシティのV. Rama通り沿いにあります。ダウンタウンから少し離れた場所ですが、州庁舎や他の役所も近くにあるエリアです。
単に株式会社といっても、実はかなり多くの種類と条件があります。
全額フィリピン資本の会社
外国資本との合弁会社(Joint Venture)
外国資本100%の法人(条件付き)
外資比率制限付きの業種(教育・マスコミ・土地関連など)
たとえば語学学校のような教育関連事業は、原則として外国人による100%の所有は認められておらず、最低でも60%以上はフィリピン人が株式を保有している必要があります。
これは「ネガティブリスト」と呼ばれる政府の産業規制によって定められており、業種ごとに外資規制の有無が決まっています。
語学学校を設立する場合、フィリピン人5名以上の発起人(Incorporators)および取締役(Directors)が必要になります。
ここで重要なのは、「フィリピン人が5人いればOK」というわけではなく、彼らの個人情報や納税者番号(TIN)、署名がすべて正式な書類に必要になるという点です。
外国人が取締役に加わることも可能ですが、TINの取得などの手続きが事前に必要であり、観光ビザのままでは難しい/役所によっては断られることもあるので注意が必要です。
法人登録にかかる費用は、主に以下の2つに分かれます:
SECへの登録料(Registration Fee)
→ 登録料は資本金の額によって変動します。
公式計算サイト:SEC Registration Fee Calculator
弁護士・代行者への報酬
→ 弁護士費用は1万〜3万ペソ程度が相場です。
中には「登録料込みのパッケージ価格」で対応してくれる事務所もあります。
基本的に法人登記は弁護士なしでも手続き可能ではありますが、言語・法的書類・タイムライン管理の難しさを考えると、現地で実績のある弁護士を通すのが現実的です。
法人登録を進めるには、事業所として使うフィリピン国内の正式な住所(オフィス/教室等)が必要です。
現地でオフィスを借りるか、すでにあるスペースを使う場合でも、**賃貸契約書のコピー(Lease Contract)**や、**建物の使用許可証(Building Permit/Occupancy Permit)**などの書類が必要になることもあります。
このため、法人登記と並行してオフィス探し・契約を進めておくとスムーズです。
ここまでは、SECでの法人登録の概要と、語学学校という特殊業種における注意点を整理しました。
次は実際に私が法人登記を行った際の流れを、「6つのステップ」に分けて詳しく解説していきます。
ここからは、私自身が実際にフィリピン・セブで語学学校の法人登記を行った際の流れを、ステップごとに解説していきます。
前提として、株式会社の形態(フィリピン人多数株主)で、語学チュートリアル事業(Tutorial Service)として申請を行ったケースです。
※あくまで一例であり、業種・資本比率・登記時期によって異なる場合があります。
まず最初に行うのが、会社名の仮予約です。これは、登記の途中で他人に同じ名前を取られないようにするための制度です。
SECの公式サイト(iRegister)にアクセス
希望する会社名を入力し、同名が存在しないかチェック
オンライン上で予約申請
約90日間有効。予約料は120ペソ前後
オンラインで申請し、後日SEC窓口で支払い
想像以上に希望する社名が通らないことが多いです。
別業種・別表記でもNGになることがあるため、複数候補を準備しておくことを強く推奨します。
会社名の予約と並行して、事業を行うオフィスの場所を決める必要があります。
住所は必須項目なので、賃貸契約書(Lease Agreement)を用意しておく必要があります。
後々、Mayor’s PermitやBarangay Clearanceの申請時にも必要になります。
可能であれば、**建物のOccupancy Permit(使用許可証)**や、家主の納税証明ももらっておくと手続きがスムーズです。
SECの窓口で、**定款(Articles of Incorporation)と細則(By-laws)**の雛形が販売されています(約600ペソ)。これを元に弁護士に書類作成を依頼します。
発起人(Incorporators):最低5名、すべてフィリピン国籍
取締役(Directors):原則フィリピン人。ただし一部外国人も可
発起人と取締役は同一人物でもOK
全員の署名(サイン)
納税番号(TIN)
パスポート(外国人の場合)
観光ビザではTIN取得が難しいが、「コネ」で対応できることも
私は出納係(Treasurer)に外国人を登録しようとして、一度SECに却下されました。
業種によっては外国人不可の役職もあるため、弁護士と事前に相談が必須です。
ここで、各発起人が何%の株式を持つかを決定します。語学学校業では、外国資本は最大でも40%までと定められています。
フィリピン人5名で60%(合計)
外国人1〜2名で40%以内
President、Treasurer、Corporate Secretaryの3役を選定(通常はフィリピン人)
定款に記載する「Authorized Capital」(例:100万ペソ)
そのうち25%(25万ペソ)を「Subscribed」
さらにその25%(6.25万ペソ)を「Paid-up」として銀行に預ける必要があります(次のステップ)
銀行に「TITF(Treasurer In Trust For)」口座を開設し、資本金を一時預け入れします。
PresidentとTreasurerの同席で銀行口座開設
定款のドラフトや個人情報が必要
資本金の25%を預け入れる
銀行から「証明書(Certificate of Deposit)」をもらう
口座開設を断られるケースもある(銀行の判断次第)
書類不備やサインミスでやり直しになることも多い
すべての書類が揃ったら、弁護士がSECに提出します。無事に受理されれば、法人登記が完了します。
通常は2週間〜1ヶ月ほどで完了(時期によって異なる)
登記完了後に、**SEC登録証(Certificate of Incorporation)**が発行されます
同時にTESDA(教育訓練機関)への通知も進める必要あり(教育系ビジネスの場合)
初めての登記は、正直「これは誰かがガイドしてくれないと無理だ」と思いました。
特にサインの確認、弁護士の選定、TIN取得、銀行の応対など、一筋縄ではいかないことばかり。でも、それを一つひとつクリアしていくことで、少しずつ「フィリピンでビジネスをやる」という覚悟と実感が育っていきました。
法人登記(SEC登録)が完了したからといって、すぐにビジネスをスタートできるわけではありません。実は登記完了後にも、複数の重要な手続きが必要です。これらを済ませて初めて、正式に「営業許可のある法人」として活動が可能になります。
以下では、語学学校の設立を想定した具体的な流れをご紹介します。
BIR(Bureau of Internal Revenue)=フィリピン国税庁での登録は、法人としての納税者番号(TIN)取得、帳簿の承認、領収書の印刷許可など、非常に重要な手続きです。
SEC登録証、定款、株主名簿、TITF口座証明などを持参
法人用TINを取得
領収書(Official Receipt, OR)・請求書(Invoice)印刷の許可申請
会計帳簿の認証(Books of Account)
ORの印刷は認定業者でしかできないため、登録後に別途発注が必要
発行遅延や不備があると、営業停止や罰金の対象になります
BIR登録が完了したら、次は市役所(City Hall)で営業許可(Mayor’s Permit)を取得します。
SEC登録証・定款・株主名簿
DTI登録(ない場合は省略)
賃貸契約書
建物のOccupancy Permit(建物使用許可)
BIRの登録証明
Barangay Clearance(次項)
消防・衛生・環境関連の許可書(Fire Safety, Sanitary Permitなど)
年1回の更新が必要
エリアによって必要書類・窓口が異なるため、早めの確認をおすすめします
営業予定地のBarangay(バランガイ=地区行政)オフィスで、Barangay Clearanceを取得します。これは「この地域で営業してよいか」の許可を得るための書類です。
賃貸契約書、オーナーの納税証明、身分証などを提出
質問や現地訪問が行われる場合あり
発行には1日〜1週間ほど
Barangay Clearanceは、Mayor’s Permit取得の前提条件となっている場合が多いため、順番を間違えないよう注意しましょう。
従業員を雇用する予定がある場合は、労働者向けの社会保障制度への登録も必要です。主に以下の3つの機関があります:
機関名 | 内容 |
---|---|
SSS(Social Security System) | 年金・労災・失業給付など |
PhilHealth | 医療保険制度(強制加入) |
Pag-IBIG Fund | 住宅ローン積立・福利厚生制度 |
SEC書類
雇用契約書(サンプルでも可)
事業所住所情報
責任者の身分証
これらを登録しないまま従業員を雇った場合、指導・勧告や罰金の対象になることがあります。
語学学校など教育系事業を行う場合は、**TESDA(Technical Education and Skills Development Authority)**への報告・登録が求められます。
TESDAは教育訓練機関の監督官庁であり、いわば「この学校は正式な教育機関です」と認めてもらう役割です。
カリキュラムの提出
教室・設備の審査(現地訪問あり)
教師のプロフィール提出
生徒募集要項の確認
TESDAの審査は意外と厳しく、「教育機関としての体裁」を整えておかないと申請が通りません。語学学校であっても、クラス構成・教材・講師基準を明確にしておくことが求められます。
フィリピンでの会社設立は、SECでの登記だけでなく、税務・行政・教育・労務すべての領域で複数の許可取得が必要です。
それぞれの手続きは完全に独立しているわけではなく、「この許可がないとあの申請ができない」といった連動関係があるため、順番を意識することも大切です。
次のセクションでは、語学学校のような教育系ビジネスにおいて特に注意すべきポイントを、さらに詳しくご紹介します。
フィリピンで会社を設立する上で、語学学校(Tutorial Service)という業種は、飲食業や小売業とは異なる特殊なルールや規制が存在します。
実際に私が語学学校を登記した際にも、教育系だからこそ必要になる手続きや制約に直面し、通常のビジネスと同じ感覚では進められないと痛感しました。
このセクションでは、語学学校という「教育系ビジネス」ならではの注意点や制度について、実体験ベースでご紹介します。
前セクションでも触れましたが、語学学校を運営するには**TESDA(Technical Education and Skills Development Authority)**への登録がほぼ必須です。
この登録を行うことで、初めて「政府に認可された教育施設」として正式に運営することが可能になります。
校舎の平面図・教室の写真
カリキュラム構成(時間割、講義内容)
講師のプロフィール(学歴・資格)
学生の募集要項
衛生・安全・防火関連の許可
私がTESDA申請を進めた際には、実際に担当官が現地を訪問し、**「黒板の位置」「教室の照明」「トイレの清掃状況」**までチェックされました。
口頭試問のように「この講師はTESDAの求める基準を満たしているか?」と細かく質問される場面もありました。
教育機関はフィリピンの憲法により外国資本100%での所有ができません。
そのため、語学学校を法人化する場合は、最低60%の株式をフィリピン人が保有している必要があります(Foreign Investment Negative Listに基づく)。
このルールは非常に厳格で、登記時の出資比率が少しでもズレているとSECに却下されることがあります。 また、代表取締役・出納係などの重要ポジションも、フィリピン人から選出する必要があります。
フィリピンでは、「語学学校」や「English Academy」という表現を用いることに一定の制限があります。
とくにTESDAに登録されていない施設が「School(学校)」という単語を使うと、違法とみなされる可能性もあるため注意が必要です。
そのため、実務上は次のような言い換えがよく使われます:
セーフな表現 | 注意が必要な表現 |
---|---|
Tutorial Center | English School |
English Training Service | Language Academy |
ESL Tutorial Business | College/University(使用不可) |
会社名の予約(SEC)や営業許可申請(Mayor’s Office)時に、「School」などのワードが入っていると引っかかる場合があります。
認可が降りるまでは、「Tutorial」「Training」「Center」など比較的柔らかい表現を使うのが無難です。
通常の語学学校は、観光ビザで短期滞在する生徒を受け入れる形となります。
もし外国人生徒に学生ビザ(Special Study Permitなど)を発行したい場合は、移民局(Bureau of Immigration)やCHED(高等教育委員会)からの追加ライセンスが必要です。
これには以下のような条件が課されます:
カリキュラムと教育時間数が一定以上
講師がTESDAやCHEDの基準を満たすこと
施設基準の厳格な遵守
外国人生徒の出入国管理に関する報告義務
語学学校として運営する場合、「ビザ発行なしの短期プログラム」で運用する方がハードルは低いですが、もし中長期で受け入れを拡大する場合は、これらのライセンス取得も視野に入れる必要があります。
フィリピンでは、教育機関としての信頼性=公的認可の有無で判断されます。
たとえ内装や設備が整っていても、TESDAやMayor’s Permitを持たないまま営業を行うと、
近隣住民からの通報
市の監査による停止命令
学生からのクレーム・返金問題
などのリスクが現実化する可能性があります。
語学学校は単なるサービス業ではなく、公的に認可された“教育機関”としての側面を持つ事業です。
そのため、法人登記だけでなく、教育に関する行政対応(TESDAや地方自治体)をきちんと理解して進める必要があります。
逆に言えば、これらをクリアしてしっかり運営できれば、外国人経営でも十分に信頼されるビジネスとして展開可能です。私自身も、最初は大変でしたが、一つひとつ乗り越えてからは安定的な運営ができるようになりました。
フィリピンで会社を設立するということは、単に書類を提出して法人格を得るだけではありません。
そのプロセス全体が、**「この国の仕組み」「文化」「人との関係性」**を学ぶための実地トレーニングのようなものでした。
私自身、語学学校の法人登記を経験して痛感したのは、以下のような現実です。
どんなに準備をしても、現場の判断で状況が変わる
法律や制度だけでなく、“人”との信頼関係が物事を進める鍵
書類の形式や表現一つで、登記が遅れたり差し戻されたりすることもある
日本の「常識」は通じない。現地の流儀を受け入れる柔軟性が必要
一方で、手続きが完了したときの達成感と、現地で正式なビジネスができる立場を得た安心感は、何にも代えがたいものがありました。
まずは冷静に、手続きを一歩ずつ整理すること
現地で信頼できる弁護士・パートナーを見つけること
登記後の手続き(BIR/Mayor’s Permit/TESDAなど)まで見越して動くこと
これらを意識すれば、多少の混乱があっても、確実に前へ進めます。
そして何より、この記事の冒頭でも少し触れましたが、フィリピンに印鑑はありません。
すべては“サイン”で証明され、サインの形こそが「あなたの証拠」となります。私は最初にいい加減に書いたサインをそのまま登録してしまい、後悔しました。
サインは、一度登録したら簡単に変えられません。
どうせなら、格好よくて書きやすく、真似されにくい自分だけの形を考えておくことをおすすめします。
フィリピンで法人を立ち上げるということは、現地の社会に正式に足を踏み入れることでもあります。
決して簡単ではありませんが、やってみると多くの学びと出会いが待っています。
私の経験が、これからフィリピンで挑戦する皆さんの参考になれば幸いです。
フィリピン留学・セブ島留学なら3D ACADEMYへ。当校では、マンツーマン授業だけでなく、「未来に繋がる留学」をテーマに、将来的に英語を活かせる様な+αの技術や経験を習得できる学校サービスをご提供しております。