イギリスでの看護師留学:基礎からキャリアまで徹底ガイド
はじめに
近年、日本の看護師や看護学生の間で「イギリスでの看護師留学」が注目されています。イギリスは世界的に評価の高い医療制度 NHS(National Health Service) を持ち、看護教育の質も国際的に認められています。そのため、イギリスで学ぶことは、単に英語力を高めるだけでなく、国際基準の看護知識や実践的スキルを身につけられる大きなチャンスです。
イギリスの看護師資格は NMC(Nursing and Midwifery Council) によって管理されており、国際的にも信頼度が高い資格とされています。日本で既に看護師として働いている方がキャリアアップを目的に挑戦するケースもあれば、これから看護師を目指す学生が大学進学として留学するケースもあります。
ただし、イギリスで看護師として学び、働くには「高い英語力」「学費や生活費の計画」「資格移行の手続き」など、いくつかのハードルがあります。準備段階で正しい情報を集め、ステップを踏むことが成功の鍵となります。
本記事では、イギリスでの看護師留学の基本知識から、留学の種類、必要な条件、費用の目安、そして卒業後のキャリアまでをわかりやすく解説していきます。
イギリスの看護制度と資格
イギリスで看護師として働くためには、まず NMC(Nursing and Midwifery Council) に登録することが必須です。NMCはイギリス全土の看護師・助産師を統括する機関で、資格の認定や職業倫理の維持を担っています。
イギリスの看護師養成の特徴
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看護師は学士レベル以上の教育を受けるのが基本 
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大学での BSc Nursing(看護学士課程) が代表的なルート 
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学科授業と臨床実習が組み合わされ、早い段階から病院や地域医療現場で経験を積む 
看護分野の専門区分
イギリスでは看護師は専門分野ごとに教育を受けます。主な分野は以下の4つ:
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Adult Nursing(成人看護) 
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Child Nursing(小児看護) 
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Mental Health Nursing(精神科看護) 
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Learning Disability Nursing(学習障害者支援看護) 
日本との違い
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日本では「看護師資格」は統一されていますが、イギリスでは専門領域ごとに免許を取得するのが一般的です。 
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そのため、留学を考える際は「どの分野で学びたいか」をあらかじめ決める必要があります。 
NMC登録の重要性
イギリスで看護師として働くには、NMCに正式に登録される必要があります。これは大学卒業後だけでなく、既に日本で看護師資格を持っている方が移行する場合も同じです。英語試験(IELTSやOET)、筆記試験(CBT)、臨床試験(OSCE)を経て認定されます。
留学のパターン
イギリスでの看護師留学には、主に3つのパターンがあります。自分の状況(これから看護師を目指すのか、日本ですでに資格を持っているのか)によって適したルートが異なります。
1. 大学での正規看護学コース(学士課程)
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対象:これから看護師を目指す人 
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内容:イギリスの大学で3〜4年の Bachelor of Nursing / BSc Nursing を履修 
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特徴: - 
座学と臨床実習を組み合わせたカリキュラム 
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成人・小児・精神・学習障害など、専攻分野を選ぶ 
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卒業後にNMC登録が可能 
 
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条件: - 
IELTS Academic 7.0前後 
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高校卒業資格または同等レベルの学力 
 
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費用目安:年間学費 £15,000〜£25,000 
2. 日本で看護師資格を持っている場合(資格移行型)
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対象:すでに日本の看護師免許を取得済みの人 
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流れ: - 
NMCへの書類申請(学歴・職歴証明) 
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英語力証明(IELTS Academic または OET) 
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CBT(Computer Based Test:筆記試験) 
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OSCE(Objective Structured Clinical Examination:臨床試験) 
 
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特徴:大学に入り直す必要はなく、試験と研修を経てイギリスで看護師登録が可能。 
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難点:高い英語力と専門的な臨床スキルが求められる。 
3. 語学留学+看護関連体験(準備型)
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対象:いきなり学位コースは難しい人、まずは英語力を伸ばしたい人 
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内容: - 
語学学校での集中英語プログラム 
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医療英語コース(Medical English)や専門準備コース 
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ボランティアやシャドーイング(病院見学)を通じた現場体験 
 
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メリット: - 
学費・期間の負担が比較的軽い 
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将来の正規進学や資格移行の準備になる 
 
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入学・資格取得に必要な英語力
イギリスで看護師を目指す場合、最も大きなハードルのひとつが 英語力 です。学位コースへの入学や、NMC登録試験に合格するためには、通常の語学留学以上に高度な医療英語が求められます。
大学入学に必要な英語力
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IELTS Academic:総合 6.5〜7.0 以上 - 
特に「Writing」「Speaking」で 6.5 以上を要求する大学が多い 
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医療系コースの場合、英語要件は高めに設定されている 
 
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Foundation Course(進学準備コース): 
 IELTSのスコアが基準に届かない場合、進学準備コースを経由して本課程に入学することも可能。
NMC登録に必要な英語力(日本で看護師資格を持つ場合)
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IELTS Academic:各セクション7.0以上、総合7.0以上 
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または OET(Occupational English Test) で 各項目B以上 
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OETは医療従事者向けの英語試験で、看護師用のモジュールが用意されているため、IELTSより実務に直結した内容。 
なぜ高い英語力が必要なのか
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臨床現場では患者・家族とのコミュニケーションが重要 
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医師や他職種と連携する際に、専門的な英語力が必須 
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実習やOSCE試験では、単なる「英語力」ではなく「即応的な会話力」が試される 
英語力アップの準備方法
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語学学校での集中コース(特にIELTS対策) 
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医療英語コース(Medical English)で専門用語を習得 
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オンラインでの海外看護師向け英語クラス受講 
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英語+医療現場体験(ボランティア・見学) 
卒業後の進路とキャリア
イギリスで看護を学んだ後には、国内外で幅広いキャリアの道が開けます。イギリスで働き続けるケース、日本に帰国するケース、さらには他の英語圏でキャリアを広げるケースもあります。
1. イギリスでの就職
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大学卒業後、NMC登録を済ませれば、NHS(国民保健サービス) を中心とした病院やクリニックで勤務可能。 
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初任給は年間 £28,000〜£34,000(約500〜650万円) が目安。 
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海外からの看護師需要は高く、就職のチャンスは比較的多い。 
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特に「成人看護」「精神科看護」は慢性的な人材不足で需要が高い。 
2. 日本に帰国して活かす
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国際経験を持つことで、国際医療機関・大学病院・研究職 で有利。 
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英語を活かして 医療通訳・国際部門 で活躍する人もいる。 
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将来的には 教育分野(看護教育者・研修講師) としてキャリアアップも可能。 
3. 他国でのキャリア展開
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イギリスの看護師資格は、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドなど英語圏でも評価が高い。 
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NMC登録を経て、これらの国での資格移行が比較的スムーズになる。 
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国際機関(WHO、NGO)での活動につながることもある。 
4. キャリアの広がり
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臨床だけでなく、公衆衛生・政策・研究・教育 といった分野への進出が可能。 
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修士・博士課程へ進学して、専門分野を深める選択肢もある。 
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グローバルな視点を持つ看護師は、今後日本でもさらに需要が高まる。 
メリットと課題
イギリスでの看護師留学は、確かに大きな挑戦ですが、その分リターンも大きいものです。ここでは、実際に留学を検討するうえで理解しておきたい「メリット」と「課題」を整理します。
メリット
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国際的に認められる看護教育 - 
イギリスの看護教育は世界的に評価が高く、学んだ知識や経験は他国でも通用します。 
 
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高度な英語力と医療英語の習得 - 
医療現場で使える実践的な英語力を身につけられるため、将来のキャリアにも大きな武器に。 
 
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多文化・多国籍の医療現場での経験 - 
NHSは移民や留学生も多く、多様な文化背景の患者に対応する力を養えます。 
 
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キャリアの選択肢が広がる - 
イギリスでそのまま働く、日本で活かす、さらに他国へ挑戦するなど、進路が多様。 
 
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課題
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英語要件の高さ - 
IELTS Academic 7.0 や OET B以上といった基準は、一般的な留学に比べてもハードルが高い。 
 
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学費・生活費の負担 - 
3年間の学士課程では総額1,000万円以上になることもあり、資金計画が不可欠。 
 
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資格移行の手続きの複雑さ - 
日本で看護師資格を持つ場合も、NMC登録には複数の試験や審査が必要。 
 
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文化・医療制度の違いに適応する難しさ - 
日本と比べて患者との関わり方や医療倫理の基準が異なり、戸惑うこともある。 
 
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まとめ
イギリスでの看護師留学は、単なる「海外留学」以上の意味を持ちます。世界的に評価の高いイギリスの看護教育を受け、NMC登録を経て実際に現場で働くことは、看護師としてのキャリアを大きく広げるチャンスとなります。
一方で、高い英語力・学費や生活費の負担・資格移行の複雑さ など、克服すべき課題も少なくありません。しかし、それらを乗り越えた先には、イギリスでの就職、日本での国際医療キャリア、さらには他国での挑戦といった多彩な道が待っています。
これからイギリスでの看護師留学を検討する方は、まず「自分はどのパターンで挑戦するのか(学位取得型・資格移行型・準備型)」を明確にし、次に「英語力と資金計画」をしっかり立てることが成功への第一歩です。
国際的な視野を持つ看護師は、これからの日本でも強く求められる人材です。イギリスでの経験は、間違いなくあなたのキャリアと人生を豊かにする財産になるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. イギリスで看護師留学をする主なルートは?
大きく分けて3つです。(1)大学の看護学士課程(BSc Nursing)に進学、(2)日本の看護師免許を活かしてNMC登録(CBT・OSCE)を経て就業、(3)語学学校+医療英語や現場体験で準備をしてから本格進学・登録に進むルートです。
Q2. NMC(看護・助産評議会)登録とは何ですか?
イギリスで看護師として合法的に働くための必須登録です。学歴・職歴の審査、英語力証明、CBT(筆記)とOSCE(臨床試験)などをクリアする必要があります。
Q3. 大学の看護学士課程の入学条件は?
高校卒業相当の学力、志望分野の適性、英語力(多くの大学でIELTS Academic 6.5〜7.0程度)などが求められます。要件は大学ごとに異なります。
Q4. 日本で既に看護師免許があります。学位を取り直す必要はありますか?
多くの場合、学位の取り直しは不要で、NMC登録の手続き(英語試験、CBT、OSCE)を経て就業を目指します。ただし学歴・実務経験の要件を満たす必要があります。
Q5. IELTSとOETはどちらが有利?
どちらも広く使われています。OETは医療従事者向けで臨床場面に近い出題、IELTSは学術一般用途で汎用性が高い、という違いがあります。NMCの受理条件や希望進路で選びましょう。
Q6. CBT・OSCEとは?難易度は?
CBTはコンピュータ形式の筆記試験、OSCEは模擬患者を用いた客観的臨床能力試験です。知識だけでなく実践的な判断・コミュニケーションが問われます。計画的な対策が必要です。
Q7. 費用はどれくらいかかりますか?
学士課程の学費は年間おおよそ£15,000〜£25,000、生活費は地域差があります(ロンドンが高め、地方都市は抑えやすい)。語学留学の場合は期間と学校によって変動します。
Q8. 奨学金や補助はありますか?
大学独自の奨学金、日本国内の財団・JASSOなど、条件次第で利用可能です。看護学生向けにNHS関連の補助が提示されることもあります。募集要項を必ず最新で確認しましょう。
Q9. 学生ビザでアルバイトはできますか?
一般的に学期中は週20時間まで就労可とされます(学校・コース・在留条件に依存)。医療系の現場補助や一般の接客などで経験を積む例があります。
Q10. ロンドンと地方、どちらがおすすめ?
ロンドンは施設・病院が多くチャンスが豊富ですが費用が高め。地方都市は生活費を抑えやすく、コミュニティが密で学習環境に集中しやすい傾向があります。
Q11. 看護の専門分野はいつ決めますか?
イギリスでは成人・小児・精神・学習障害などの専攻を分けて養成するのが一般的です。大学出願時点で志望分野の選択を求められるケースが多いです。
Q12. 語学に不安があります。Foundationや準備コースは有効?
有効です。進学準備(Foundation)や医療英語(Medical English)で用語・記録・症例コミュニケーションを強化し、本課程・NMC対策の基盤を作れます。
Q13. 出願のタイムラインは?
一般に入学の約1年前から情報収集・英語対策、9〜6か月前に出願・書類準備、合格後にビザ申請・渡航準備という流れです。OSCE等を見据える場合はさらに余裕を持ちましょう。
Q14. 出願書類は何が必要?
成績証明、卒業証明、英語スコア、履歴書、パーソナルステートメント、推薦状など。NMC登録ではさらに職歴証明やライセンス確認などの追加書類が必要になります。
Q15. 日本の看護師資格はそのまま使えますか?
そのままでは働けません。NMCの審査と試験を経てイギリスの登録看護師として認められる必要があります。
Q16. 卒業後にイギリスで働けますか?
条件を満たしNMC登録を完了すれば、NHSや民間医療機関での就業が可能です。在留・就労に関する制度は変更される場合があるため、最新の公式情報を確認してください。
Q17. 初任給や給与水準の目安は?
勤務地や職位、勤務形態により幅があります。一般的な新規登録看護師のレンジを基準にしつつ、夜勤手当・地域手当なども考慮しましょう。
Q18. 日本への帰国後、キャリア上のメリットは?
国際医療、大学病院、教育・研究、医療通訳や国際部門などで優位性があります。英語・多文化対応力は国内でも高く評価されます。
Q19. ボランティアや見学は可能?
医療機関やコミュニティでのボランティア、シャドーイングが得られる場合があります。参加条件や保険、守秘義務等の確認が必要です。
Q20. 年齢制限はありますか?
入学・登録自体に厳密な年齢上限は設けられないことが多いですが、在留制度や奨学金条件で年齢要件がある場合があります。募集要項を確認してください。
Q21. 住まいはどう探す?寮はありますか?
大学寮、学生向けレジデンス、シェアハウスなどが一般的です。初年度は寮で生活基盤を作り、翌年以降に外部物件へ移る学生も多いです。
Q22. 医療英語の学習法は?
医療英語コースでSBAR、カルテ記載、患者説明、カンファレンス表現を集中的に学びます。ロールプレイ、症例ベース学習、OET対策教材の活用が効果的です。
Q23. 失敗しやすいポイントは?
英語スコアの過小見積り、資金計画の不足、書類不備、試験対策の着手遅れ、実習・OSCEのコミュニケーション軽視など。逆算スケジュールで早めの準備が肝心です。
Q24. 家族帯同は可能?
コースや在留条件により異なります。帯同の可否、就労・就学、医療保険等の要件は変動し得るため、最新の公式ガイダンスを確認してください。
Q25. 情報はどこで最新確認すべき?
各大学の入学要項、NMCの公式ガイダンス、在留・査証の公式情報を必ず確認してください。本FAQは一般的な目安であり、最終判断は公式情報に基づいて行ってください。

 
		 
		 
			 
			 
			 
			 
			