親子留学に必要なビザと保険の基礎知識

はじめに

親子留学を考えるとき、多くの方が最初に注目するのは学校や住まいですが、実はそれ以上に大切なのが「ビザと保険」の準備です。
どんなに魅力的な学校を見つけても、ビザの種類を間違えると希望する期間の滞在ができなかったり、子どもが現地校に通えないこともあります。

また、海外では医療費が非常に高額になる国も多く、保険なしでの滞在は大きなリスクです。
親子留学では、子どもの教育だけでなく、親として「安全で安心な生活環境」を整えることも大切な準備のひとつ。

本記事では、親子留学で必要となるビザの仕組みを国ごとに分かりやすく説明し、あわせて加入しておくべき保険の種類と注意点をまとめました。
これから親子で留学を検討している方が、トラブルなく安心して渡航準備を進められるよう、基礎から整理していきます。


親子留学で必要なビザの基本

親子留学では、子どもと親が別のビザを取得するのが一般的です。
たとえば、子どもは現地の学校や語学学校に通うための「学生ビザ」を取得し、親はその子どものサポート目的で「ガーディアンビザ」や「同伴ビザ」を申請する形になります。

短期(1〜3か月程度)の親子留学では、観光ビザで入国し、子どもが短期コースを受講できる国もあります。
しかし、3か月以上の長期留学や現地校への通学を希望する場合は、正式な就学ビザの取得が必須です。

また、ビザの要件は国によって大きく異なり、以下のような点に注意が必要です。

  • 親の就労が禁止されている国も多い

  • 滞在期間の延長は、現地での手続きが必要になることがある

  • 子どもの年齢によって、同行できる保護者ビザの種類が制限される場合がある

親子留学をスムーズに進めるためには、「子どもの就学ビザ」と「親の滞在ビザ」をセットで考えることが大切です。
次章では、主要な留学先6か国(フィリピン・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・シンガポール・マルタ)について、それぞれのビザ制度をわかりやすく整理していきます。


フィリピン(セブ島)

  • 子ども:短期・長期を問わず、基本的には「観光ビザ+SSP(Special Study Permit/特別就学許可証)」で就学が可能です。観光ビザで入国し、学校を通じてSSPを取得すれば、合法的に語学学校へ通うことができます。

  • :観光ビザで同行が可能。滞在期間を延長する場合は、現地の入国管理局で簡単に更新手続きが行えます。より長期での滞在を希望する場合は、SRRV(リタイアメントビザ)なども選択肢となります。

  • ポイント:短期・長期を問わず柔軟に対応できるのが特徴。親子で同じ学校に通うケースも多く、ビザ手続きがシンプルで初めての親子留学にも適しています。


カナダ

  • 子ども:6か月以内の短期なら観光ビザ(eTA)で就学可能。6か月以上の場合は「Study Permit(学生ビザ)」が必要です。

  • :子どもが未成年の場合、「ガーディアン(保護者)」として同行可能。多くは観光ビザで滞在しますが、長期滞在の場合はビジター記録の延長申請が必要。

  • ポイント:親は就労不可。ビザ手続きに時間がかかるため、早めの申請が安心です。


オーストラリア

  • 子ども:学生ビザ(Subclass 500)で現地校や語学学校に通学。

  • :ガーディアンビザ(Subclass 590)を取得し、18歳未満の子どもの生活をサポートすることが目的。

  • ポイント:親は就労不可。滞在中に親が学校へ通う場合は、別途短期コース(観光ビザ範囲内)での受講が可能。


ニュージーランド

  • 子ども:学生ビザで通学可能。現地校や語学学校どちらも対象。

  • :ガーディアンビザを取得し、12歳未満の子どもに同行できます。

  • ポイント:親は週20時間以内の語学コースに通うことが認められる場合もあり、柔軟な制度が魅力。


シンガポール

  • 子ども:現地の学校やインターナショナルスクールで学ぶ場合、「Student’s Pass(学生パス)」を取得。

  • :子どもが未成年の場合、「Dependant’s Pass(扶養ビザ)」または「Long-Term Visit Pass(長期滞在ビザ)」で同行可能。

  • ポイント:ビザ発給には学校側の推薦が必要。安全性と教育レベルの高さで人気です。


マルタ

  • 子ども:90日以内の短期なら観光ビザでOK。長期の場合は「Student Visa(学生ビザ)」を申請。

  • :観光ビザまたは同行者ビザで滞在可。滞在期間を超える場合は延長申請を行う。

  • ポイント:EU圏ながら手続きが比較的簡単で、治安の良さから親子留学にも人気。


各国でビザ条件が異なるため、留学期間・子どもの年齢・学校の種類を基準に選ぶのがポイントです。
次の章では、滞在中に欠かせない「保険の基礎知識」について解説します。


親子留学で必要な保険の種類

親子留学では、海外旅行保険や留学生保険への加入が必須です。
国によっては、保険証明の提示を求められる場合もあり、無保険のまま渡航すると、万が一の病気やけがで高額な医療費を請求されることがあります。

特にカナダやオーストラリアなどの医療費は非常に高く、軽い風邪でも数万円、入院すれば数十万円〜百万円単位になることも珍しくありません。
そのため、親子留学では「親子セット」で加入できる総合タイプの保険を選ぶのが一般的です。


主な保険の種類

海外旅行保険(短期向け)

1〜3か月程度の短期親子留学に最適。
病気・けが・盗難・携行品損害・賠償責任など、基本的な補償が含まれています。
旅行会社や保険会社で簡単に申し込みでき、出発前日に加入することも可能です。

留学生保険(長期向け)

3か月以上の長期滞在の場合はこちらを推奨。
通院・入院・救援費用・賠償責任に加え、歯科治療や精神面のケアまでカバーするプランもあります。
親子で加入できる「ファミリープラン」も多く、長期滞在に安心です。

現地指定保険

国や学校によっては、入学条件として「指定保険」への加入が義務付けられている場合があります。

  • オーストラリア:OSHC(Overseas Student Health Cover)

  • カナダ:州ごとに公的医療保険制度あり(加入条件に注意)

  • ニュージーランド:政府認定の留学生保険への加入が必須

これらの国では、日本の保険だけでなく現地指定保険を追加で加入する必要があるケースもあります。


保険選びのポイント

  • 治療・入院費用の補償上限は最低でも1,000万円以上を目安に

  • 親子で同じ保険会社にまとめると、手続きや延長がスムーズ

  • キャッシュレス対応病院のある保険を選ぶと現地で安心

  • 留学延長や再入国時に更新しやすいプランを選択する


ビザ・保険手続きのタイミングと注意点

親子留学では、出発の数か月前から計画的に手続きを進めることが大切です。
ビザの申請や保険加入には時間がかかる場合があり、直前になると希望通りの出発日や学校スケジュールに間に合わないこともあります。

ここでは、スムーズに準備を進めるためのタイミングと注意点を整理します。


ビザ手続きのタイミング

  • 出発の2〜3か月前にはビザ情報を確認し、申請書類を準備。

  • **入学許可証(Letter of Acceptance)**が発行されてからでないと申請できない国も多い。

  • オンライン申請が主流ですが、国によっては指紋認証や面接が必要な場合もあります。

  • フィリピン(セブ島)のように「現地で許可証(SSP)を取得できる国」は柔軟ですが、他国では日本出発前の申請が必須です。


保険加入のタイミング

  • 航空券を予約した時点で保険の検討を始めるのが理想。

  • 学校やビザ申請時に「保険証明書」の提出を求められるケースもあります。

  • 出発日から帰国日までをしっかりカバーする期間で契約すること。

  • 渡航中に滞在延長する可能性がある場合は、延長手続きが簡単な保険会社を選ぶと安心。


よくある注意点

  • 子どものビザが下りても、親のビザが遅れることがあるため、同時申請を意識。

  • 保険証券やパスポートコピーなど、重要書類はクラウドやUSBにバックアップを保存。

  • クレジットカード付帯保険は補償期間が短く、親子留学には不十分な場合が多い。

  • 国によっては、保険未加入だと入国拒否の可能性がある。


まとめ

親子留学を成功させるためには、学校選びや住まい探しと同じくらい、ビザと保険の準備が重要です。
どんなに短期の滞在であっても、ビザの条件を満たしていなければ就学が認められず、保険に未加入のままでは、万が一のトラブルに対応できません。

フィリピン(セブ島)のように「観光ビザ+SSP」で柔軟に学べる国もあれば、オーストラリアやニュージーランドのように「学生ビザ+ガーディアンビザ」のセット申請が必須の国もあります。
つまり、親子留学の第一歩は「どの国が自分たちの生活スタイルに合っているか」を見極めることから始まります。

また、保険についても「価格」より「補償内容」を重視することが大切です。
特に子どもが小さいうちは、病気やけがの頻度が高いため、医療費・救援費・入院費がしっかりカバーされるプランを選びましょう。

最後に、親子留学は単なる語学学習ではなく、「親と子が一緒に成長できる時間」です。
その貴重な体験を安心して楽しむためにも、ビザと保険の準備を早めに整え、万全の状態で新しい留学生活をスタートさせましょう。


FAQs

親子留学で親と子は同じビザですか?

いいえ。一般的に子どもは学生系ビザ親はガーディアン/同伴用ビザや観光ビザなど別の在留資格になります。国ごとに要件が異なるため、セットで確認してください。

フィリピン(セブ島)はどんなビザで通学できますか?

**観光ビザ+SSP(Special Study Permit)**が基本です。SSPは学校経由で取得し、短期・長期いずれも語学学校での就学が可能です。親は観光ビザで同行し、必要に応じて現地で延長できます。

カナダで6か月以上学ぶ場合は?

Study Permit(学生ビザ)が必要です。親は観光ビザ(ビジター)で同行するのが一般的で、長期の場合はビジター記録の延長を検討します。親の就労はできません。

オーストラリアの親子留学で必要なビザは?

子どもはSubclass 500(学生ビザ)、親は**Subclass 590(ガーディアンビザ)**が基本です。親は就労不可で、子どもの生活サポートが目的となります。

ニュージーランドのガーディアンビザは何歳まで?

通常、子どもが満12歳になるまで親がGuardian of a Student Visitor Visaで同行可能です。条件は変更されることがあるため、申請前に最新情報を確認してください。

シンガポールは親も一緒に滞在できますか?

子どもはStudent’s Pass、親は状況によりDependant’s PassまたはLong-Term Visit Passで同行可能です。多くの場合、学校側の書類サポートが前提になります。

マルタは短期なら観光ビザで足りますか?

90日以内の短期なら観光ビザで可、長期はStudent Visaが必要です。親は観光ビザや同行者枠で滞在し、期間超過時は延長手続きを行います。

どのタイミングでビザ申請を始めるべき?

出発の2〜3か月前に情報収集と書類準備を開始するのが目安です。入学許可証(LOA)発行後でないと申請できない国もあります。

必要書類は何がありますか?

一般的にパスポート、入学許可証、資金証明、親子関係証明、写真、申請フォーム、保険証明など。国・年齢・学校種別で異なります。

親が現地で語学学校に通っても大丈夫?

国により条件が異なります。フィリピンは観光ビザ+SSPで親も就学可。オーストラリアやNZではガーディアンビザの範囲内で短期コースが可能な場合があります。

親子留学に保険は必須ですか?

実質的に必須です。入国条件や学校条件として保険加入証明が求められることがあり、医療費の高い国では無保険は大きなリスクです。

海外旅行保険と留学生保険の違いは?

海外旅行保険は短期向け留学生保険は長期向けで補償が手厚い傾向。後者は通院・入院・救援費、賠償、場合により歯科やメンタルまでカバーするプランがあります。

クレジットカード付帯保険で足りますか?

期間・補償額が不足することが多く、親子留学には不向きです。キャッシュレス診療対応や高額医療費に耐える上限額の保険を別途用意しましょう。

推奨される補償内容・上限の目安は?

治療・救援費用は合算で1,000万円以上を一つの目安に。賠償責任、携行品、入院日額、緊急帰国なども確認。キャッシュレス医療ネットワークの有無は重要です。

現地指定保険(OSHCなど)は必要?

国や学校により指定保険の加入が義務です(例:オーストラリアのOSHC、NZの政府認定保険、カナダの州制度など)。日本の保険+現地指定保険の併用が必要な場合があります。

既往症や通院歴はカバーされますか?

プランによって対象外または条件付きです。告知義務や待機期間の有無を必ず確認し、必要なら既往症対応特約のある商品を検討してください。

保険はいつからいつまで掛ける?

出発日(自宅出発時点)から帰国日までをカバー。乗継遅延やロストバゲージを考えると、前日開始帰国翌日までなど余裕を持たせる選択も有効です。

渡航後に期間延長やプラン変更はできる?

保険会社により延長可/不可が分かれます。長期になりそうな場合は延長しやすい保険を最初から選びましょう。

観光ビザで入国し、現地で学生ビザに切り替えられる?

国次第です。フィリピンはSSPを現地取得する方式で柔軟ですが、他国は日本出発前の学生ビザ必須が一般的です。切替可否は必ず事前確認してください。

最新情報の確認先は?

各国大使館・領事館、国の移民局サイト、学校公式情報が一次情報です。年度で要件が改定されることがあるため、申請直前に再確認しましょう。

親子留学ガイド|親子で英語留学【2025-2026年版】

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