目次
フィリピンで起業するにはいくらかかる?
初期費用の目安とリアルな内訳【2025年最新版】
✅ はじめに:なぜ「費用感の把握」が重要か?
フィリピンは物価が安く、日本に比べて「少ない資金で起業できそう」と感じる方が多いでしょう。実際、法人設立の手続きも比較的簡易で、資本金のハードルも高くありません。
しかし、初期費用の全体像を正確に把握していないと、起業後すぐに資金ショートして撤退…という例も少なくないのが現実です。なぜなら、以下のような“見えないコスト”や落とし穴が数多く存在するからです。
①「設立コスト」は氷山の一角にすぎない
会社を登記するだけなら、たしかに数万円〜10万円程度で済みます。しかし、その後に必要な営業許可、BIR登録、帳簿作成、OR印刷などの税務周りの整備が加わると、費用も手続きの複雑さも一気に増します。
✅「会社を作ったのに営業できない」=許認可を甘く見ていたケースの典型
②「安く始められる」は「安く続けられる」とは限らない
例えば、月の人件費が1人1万円程度で済むとしても、それは社会保険や遅刻・欠勤のフォローコストまで考慮した金額でしょうか?また、売上がまだ出ていない段階で税金や家賃、BIRへの支払いが先に来ることもあります。
✅ “ランニングコスト”よりも“キャッシュフローのタイミング”を理解しないと、資金が先に尽きる
③ 為替や輸入に関わるコストのブレ幅が大きい
特に飲食業や日本品質を求めるビジネスでは、輸入調味料・機器・備品に依存する傾向が強くなります。2024〜2025年にかけての円安・ドル高の影響は非常に大きく、見積もっていた輸入費が1.5倍〜2倍になる例も頻発しています。
✅ 価格が安定しない国での仕入れ戦略が重要
④ 光熱費・輸入物価の上昇
フィリピンは「世界で2番目に電気代が高い国」とも言われており、特にエアコン・冷蔵設備を多用する業態ではランニングコストが非常に重くなる
水道・ガス料金もエリアにより大きく変動し、都市部では日本と同等またはそれ以上になるケースも
為替の影響(ドル高)で、日本や海外からの機材・備品輸入コストも上昇中
⑤ フィリピン特有の「契約時の前払い条件を事前に確認すべき理由」
フィリピンでは、契約時に家賃や保証金を一部まとめて支払う文化が一般的です。ただし、近年はインフレや賃貸競争の影響で条件がやや緩和されており、特に中小物件では交渉の余地もあります。
| 項目 | 一般的な初期支払い条件(2025年時点) |
|---|---|
| 店舗・オフィス賃貸 | 前家賃1−2ヶ月 + 保証金2−6ヶ月 |
| 内装工事費 | 一部前払い(30〜50%) or 完成後一括のケースも |
| 家具・設備購入 | 一括支払いが原則(現金・振込) |
| 光熱・通信インフラ契約 | デポジット1ヶ月分程度+開通費 |
✅ ポイント: 初期費用の中で「家賃系のキャッシュアウト」は見落とされがち。契約書に記載されている支払条件を事前に確認し、交渉も視野に入れることで、資金計画の安定性が大きく変わります。
⑥ 「最初に準備すれば済む」ではなく、「予備費を持たないと破綻する」
事業開始後、以下のような“予期せぬ出費”が発生するケースは多々あります:
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消防署や衛生局からの再検査指示(再工事+再費用)
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POSやインターネットのトラブル(代替購入)
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スタッフ採用時のトラブル → 追加採用&教育コスト
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売上が想定より遅れて立ち上がるリスク
✅「最低限これだけで起業できます」ではなく、「この金額なら半年戦えるか?」が本当の起業判断
まとめ:大切なのは「いくらで始めるか?」ではなく、「どこまで耐えられるか?」
フィリピンでの起業は、たしかに日本より門戸が広く、スピード感もあります。
しかし、“甘く見ていた”というだけで撤退する起業家が毎年後を絶たないのも事実です。
だからこそ、この記事では「設立費用」だけでなく、
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実際の業務でかかるランニングコスト
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現地独自の支払い文化
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初年度に必要な“耐久資金”
までをリアルに解説していきます。
次のステップでは、法人設立時に必要な具体的な手続きと費用内訳を見ていきましょう。
✅ ステップ1:法人設立にかかる基本コスト
~ SEC・BIR・許認可など、登記から営業開始までの費用を徹底解説 ~
フィリピンで法人(株式会社)を設立するには、いくつかの官公庁での手続きが必要です。それぞれに対して費用が発生し、**最初にまとめて10万〜25万ペソ程度(約25万円〜60万円)**を見ておくのが現実的です。
以下は、法人設立に必要な主なコスト項目です:
◉ ① SEC登録費用(Securities and Exchange Commission)
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費用目安: 登録料+ドキュメント審査料などで8,000〜12,000ペソ
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備考: 登録する資本金額によって変動あり(例:10万ペソ資本金で約8,000ペソ前後)
✅ 登記には以下が必要:
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Articles of Incorporation(定款)
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By-laws(会社規約)
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Treasurer’s Affidavit(財務責任者の誓約書)
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名前予約(Name Reservation:115ペソ/30日間)
◉ ② Barangay Clearance(地区許可証)
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費用目安: 500〜1,500ペソ程度
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備考: 事業所を構える地域のバランガイオフィス(地区役場)で取得。
✅ 必要書類:
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SEC登録証明
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賃貸契約書のコピー
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有効なID、申請用紙
◉ ③ Mayor’s Permit(営業許可証)
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費用目安: 5,000〜20,000ペソ前後(事業規模により異なる)
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備考: 市役所(City Hall)で取得。オフィスや店舗の面積・売上見込み・業種により金額が変わります。
✅ 必須条件:
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Sanitary Permit(衛生許可)
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Fire Safety Certificate(消防安全証)
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Zoning Clearance(用途地域許可)
◉ ④ BIR登録費用(税務署登録)
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費用目安: 年間登録料500ペソ+Official Receipt印刷費用10,000〜15,000ペソ程度
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備考:
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ATP(Authority to Print)申請+OR(公式領収書)印刷必須。
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Books of Accounts(帳簿)の登録も必要(無料 or 数百ペソ)
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✅ 注意点:
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ORを持たずに営業を開始すると罰金対象
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登録証明書(BIR Form 2303)の発行が営業・銀行口座開設に必要
◉ ⑤ その他:会計士・弁護士報酬、代行手数料
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費用目安: 10,000〜50,000ペソ(内容・契約範囲により異なる)
✅ 例:
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登記書類作成・翻訳・提出代行
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公証(Notarization)費用
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弁護士との顧問契約(月額 or 初期費用)
✅ 合計目安(法人設立の初期費用):
| 区分 | 金額(ペソ) | 備考 |
|---|---|---|
| SEC登録 | 8,000〜12,000 | 資本金により変動 |
| Barangay Clearance | 500〜1,500 | 地区により異なる |
| Mayor’s Permit | 5,000〜20,000 | 業種・規模による |
| BIR登録関連 | 10,500〜15,500 | OR印刷・帳簿含む |
| 会計士・代行手数料等 | 10,000〜50,000 | 任意(必要に応じて) |
| 合計目安 | 34,000〜99,000ペソ(約9万〜26万円) |
✅ ステップ2:店舗・オフィス契約時に必要な初期費用
~ 家賃・デポジット・内装工事。見落としがちな“フィリピン特有の壁”とは? ~
法人設立後に必要なのが、実際に営業する「物理的な拠点」の確保です。オフィス、店舗、教室などの賃貸契約と内装工事には、まとまった初期資金がかかります。
目安としては、最低でも15万〜50万ペソ(約40万〜130万円)前後の準備が必要になります。
◉ ① 家賃の前払い + 保証金(Deposit)
フィリピンでは、賃貸契約時に「保証金(Security Deposit)」と「前家賃(Advance Rent)」の両方が求められます。
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一般的な条件:
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保証金:2−6ヶ月分
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前家賃:1〜2ヶ月分
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-
合計で3〜4ヶ月分の家賃を一括で支払うのが一般的
✅ 例:
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月額家賃:30,000ペソ → 契約時に90,000〜200,000ペソを一括支払い
✅ 注意:
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保証金は退去時に返金されるが、修繕費・未払いなどで差し引かれることが多い
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賃料は交渉で若干の調整が可能な場合あり
◉ ② 内装工事・設備費(Fit-Out)
ここが最も金額の振れ幅が大きく、かつ予算超過リスクが高い部分です。
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費用目安: 小規模店舗で50,000〜200,000ペソ、中規模以上では1,000,000ペソ超になることも
✅ 具体的な内訳:
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間仕切り・壁・床・天井の工事
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エアコン・照明・配線
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厨房・トイレなどの給排水工事
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家具・設備設置
⚠️ フィリピン内装業者の“3つの現実”
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納期が守られない
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「3週間で終わります」と言われても、3ヶ月〜半年以上かかるケースが頻発
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材料遅延・職人の急な離脱・祝日・雨天などで簡単にストップ
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見積額よりも費用が跳ね上がる
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見積に含まれていない項目が後出しされる
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言葉のすれ違いで「含まれていないと思わなかった」という事例が多い
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職人の質にバラつきがある
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「前払い後に音信不通になる」ケースも(特に個人の大工)
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✅ 回避策:
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契約前に明確な見積書(Scope of Work)を作成
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支払いは「段階的に」設定(例:30%前金・40%中間・30%完成時)
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弁護士または信頼できるフィリピン人の同席のもと契約
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口コミ・紹介・過去施工実績で業者を選定(Facebookグループや現地日本人経営者ネットワークが有効)
◉ ③ 各種設備購入・通信環境の整備
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家具・什器(テーブル、棚、椅子など):20,000〜100,000ペソ
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通信設備(Wi-Fi、電話線):月額費用+初期設置で3,000〜15,000ペソ
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発電機(必要に応じて):20,000〜100,000ペソ
◉ 合計初期費用(契約時の支払い目安)
| 項目 | 費用(ペソ) | 備考 |
|---|---|---|
| 家賃(3〜4ヶ月分) | 90,000〜200,000 | 月3万ペソの物件想定 |
| 内装工事・設備 | 50,000〜1,000,000 | 規模・業種で変動 |
| 家具・Wi-Fiなど | 30,000〜200,000 | |
| 合計目安 | 220,000〜1,500,000ペソ | 約55万〜300万円程度 |
✅ まとめ:フィリピンでの「オープン時期」は最低でも“半年先”を見て逆算を
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業者選定は慎重に、支払いは段階的に
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物件選定時には、内装にかかる制限・許可の確認も必須
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「余裕を見て倍の予算・倍の期間」と考えておくのが安全策
✅ ステップ3:ビザ・滞在関連コスト(オーナー本人)
~ 起業前に“どのビザで滞在するか”を明確にしておこう ~
フィリピンでビジネスを始める場合、法人の設立そのものとは別に、オーナー個人が合法的に滞在・活動するためのビザ取得が必要です。
「とりあえず観光ビザで様子見」も可能ですが、中長期的には正規のビザステータスを持つことが必須になります。
ここでは、起業家が取り得る代表的なビザと、そのコストを整理します。
◉ ① 9Gビザ(就労ビザ)【最も一般的】
フィリピン法人の役員・マネージャーとして自社で就労許可を申請するビザ。法人と個人の両方で申請が必要です。
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申請対象: フィリピン法人の役員、従業員
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有効期間: 1年更新
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申請手続き: DOLE → BOI/BID → BIR → BGCなど複数ステップあり
✅ 初年度コスト(エージェント利用時):
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手数料合計: 約60,000〜120,000ペソ(約16万〜32万円)
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所要期間: 約2〜3ヶ月
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備考: 法人側の整備(SEC登録、BIR納税証明など)も必須
◉ ② 13Aビザ(配偶者ビザ)
フィリピン人と結婚している外国人向け。最も安定・長期で滞在できるビザのひとつ。
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要件: 正式な婚姻証明、生活実態の証明
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初回: 1年の仮滞在(Probationary)、その後永住化可
✅ 初年度コスト:
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申請費用:15,000〜25,000ペソ
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追加書類準備、翻訳・公証費など含め約40,000〜60,000ペソ
✅ ポイント:
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滞在資格としては強力だが、法人設立やビジネス活動自体の許可は別途考慮が必要
◉ ③ SRRV(特別居住退職者ビザ)
50歳以上の外国人に人気の「投資型永住ビザ」。起業にも応用可能。
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年齢条件: 50歳以上
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預託金: 20,000〜50,000USD(プランにより異なる)
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利点: 更新不要の永住権に近い。マルチエントリー。再入国容易
✅ 初年度コスト:
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預託金:20,000ドル以上(約300万円〜)
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申請費用:約2,000USD前後(エージェント手数料含まず)
✅ 備考:
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直接的に「ビジネス可」とはされていないが、法人の出資者や役員としての登録は実務上可能
◉ ④ 観光ビザの延長【暫定措置として】
初回30日(国籍により)+延長で最大36ヶ月まで滞在可能(2ヶ月ごと更新)
✅ 費用例(6ヶ月滞在):
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初回延長:約4,000〜5,000ペソ
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以降2ヶ月ごとに約3,000〜4,000ペソ
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合計:約15,000〜20,000ペソ前後
✅ 注意:
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働くことは一切禁止
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銀行口座開設・ライセンス申請等で不利な場合あり
✅ ビザ選定のポイントと初期想定コスト(比較表)
| ビザの種類 | 有効期間 | 初年度コスト(目安) | 起業との相性 |
|---|---|---|---|
| 9G(就労) | 1年更新 | ₱60,000〜120,000 | ◎(最適) |
| 13A(配偶者) | 永住可 | ₱40,000〜60,000 | ◯(家族帯同向け) |
| SRRV | 永住的 | 約300万円〜 | △(50歳以上) |
| 観光ビザ | 最大3年 | ₱20,000前後 | ×(一時滞在のみ) |
✅ まとめ:「法人を作ること」と「合法に滞在すること」は別問題
起業を始める際は、法人設立だけでなく、**「自分の立場・在留資格をどうするか?」**も同時に計画しておくことが必要不可欠です。
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税務・口座・契約・役所対応など、滞在ステータスによって制約が発生
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フィリピンのビザ制度は申請期間が長く、変更手続きが煩雑
▶ 結論:まずは「3〜6ヶ月後の自分の動き方」から逆算しよう。
✅ ステップ5:その他「見えない初期費用」
〜“想定外の出費”が、現地ビジネスでは日常茶飯事〜
フィリピンでの起業では、「法人登記費用」や「家賃」「人件費」などの明確な支出以外にも、**“見えにくいが確実に発生する費用”**が存在します。これらを事前に織り込んでおかないと、「資金ショート」のリスクが高まります。
◉ 1. エージェント・代行費用
登記、BIR登録、ビザ取得、営業許可などを代行するローカルエージェントの利用は一般的です。
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相場:₱20,000〜₱100,000
-
登記・市役所・BIR・衛生・消防・看板申請まで一括で依頼する場合が多い
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英語・現地語のやり取りに不安がある外国人には実質必須
✅ 注意:価格が安すぎる代行業者には注意。登録漏れ・罰金の原因になるケースも。
◉ 2. 通信・IT・会計インフラ費用
開業前の段階で、以下のような支出も発生します:
| 項目 | 目安金額(初期) | 備考 |
|---|---|---|
| Wi-Fi契約(PLDT / Globeなど) | ₱2,000〜₱5,000 | 工事費込み/法人名義の場合は時間がかかることも |
| POS・会計ソフト | ₱10,000〜₱50,000 | 月額課金型も多く、OR発行対応が必須 |
| PC・プリンターなど備品 | ₱20,000〜₱100,000 | ローカル店舗購入 or 輸入(輸送費加算あり) |
✅ ポイント:Official Receipt発行にはBIR登録済みの会計ソフトまたは印刷業者が必要。安易に未登録のPOSを導入するとトラブルに。
◉ 3. 不測の事態に備える「予備資金」
開業後すぐに売上が上がらない、工事が延びる、予想外の罰金が発生するなどはよくある話です。
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最低でも運転資金3ヶ月分+予備費₱100,000〜₱200,000は確保を
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スタッフ採用が遅れる、行政申請でストップする、なども織り込み済みに
✅ まとめ:「見えない初期費用」こそ、起業の成功・失敗を左右する
目に見えるコストは誰でも見積もれますが、**“現地特有の流れの遅さ・人件費以外の運用コスト・制度の複雑さ”**に対する備えこそが、フィリピン起業で最も重要です。
アドバイス:
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見積もりには常に“30%の予備費”を加えて計算する
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ローカルの事情を熟知した現地パートナーや弁護士・会計士のアドバイスを積極的に受ける
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「時間=コスト」であることを常に意識する
✅ ステップ6:業種別の初期費用モデルケース(2025年版)
フィリピンで起業する際、業種によって必要な初期投資は大きく異なります。ここでは**代表的な3業種(飲食・サービス・教育)**について、それぞれの初期費用モデルケースを紹介します。あくまで目安ですが、計画の参考になるはずです。
ケース①:レストラン・カフェ(飲食業)
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 法人設立・弁護士・BIR登録 | ₱70,000 |
| 店舗契約(家賃2ヶ月分+保証金) | ₱150,000(賃料₱50,000/月の場合) |
| 内装・キッチン工事 | ₱500,000(小規模でも2〜3倍予備費必要) |
| 設備・家具・調理器具 | ₱200,000〜₱300,000 |
| マーケティング・広告・看板等 | ₱50,000 |
| 初期人件費(3ヶ月分) | ₱120,000(₱15,000 × 4名 × 2ヶ月分) |
| ビザ・滞在費(個人) | ₱50,000 |
合計:約 ₱1,140,000(約300万円)
※飲食業は特に「内装工事・設備投資」の比重が大きく、業者選定の信頼性が生死を分ける要素になります。
ケース②:コンサルティング・オンライン事業(サービス業)
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 法人設立・会計士・税理士報酬 | ₱60,000 |
| 小規模オフィス契約(登記+最低限の作業用) | ₱50,000(2ヶ月家賃+保証金) |
| PC・ネット・備品 | ₱80,000(ラップトップ2台・Wi-Fi等) |
| ウェブサイト構築・ロゴ・デザイン | ₱30,000 |
| ビザ・滞在費(SRRVまたは13A等) | ₱40,000〜₱120,000 |
| 初期人件費(アシスタント1名) | ₱30,000(₱15,000×2ヶ月) |
合計:約 ₱290,000〜₱400,000(約80〜110万円)
※オンライン系は初期費用を抑えやすいですが、ビザ戦略と登記の信頼性(書類整備)が重要になります。
ケース③:英語学校・学習系ビジネス(教育業)【大規模物件モデル】
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 法人登記・SEC・教育関連認可手続き | ₱150,000〜₱250,000 |
| 校舎・寮物件の契約(保証金+前払い家賃) | ₱6,000,000〜₱7,000,000(例:₱1,000,000/月 × 6〜7ヶ月) |
| 校舎・寮の内装工事・修繕 | ₱3,000,000〜₱5,000,000(教室・個室・食堂・消防対応など) |
| 家具・家電・Wi-Fi・PC等備品一式 | ₱1,200,000〜₱2,000,000 |
| 教材・カリキュラム開発費 | ₱300,000〜₱500,000 |
| 多言語サイト制作・SEO・広告 | ₱500,000〜₱1,000,000 |
| スタッフ給与(教職員・管理者等、3ヶ月分) | ₱1,000,000〜₱1,500,000 |
| ビザ・法務・会計コンサル費用 | ₱300,000〜₱500,000 |
合計:₱12,500,000〜₱17,500,000(約3,200万〜4,500万円)
ポイント解説
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物件コスト:100人以上収容可能な校舎・寮一体型施設では、₱1,000,000/月以上が相場。契約時には6〜7ヶ月の前払いが条件となることが多く、₱6〜7M級の支出が発生。
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工事費用:教育機関としての営業には消防・衛生・法令遵守のインフラ改修が必須。スプリンクラー・排煙・避難経路確保などで追加数百万ペソは想定しておくべき。
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運転資金確保の重要性:集客・広告・教職員の給与支払いのため、開校前から半年分の運転資金を用意しておくことが現実的。
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初期プロモーション費:多言語でのSEO施策・LP制作・Meta広告などで100万ペソ単位の投資が必要。
✅ まとめ:業種別に“勝負ポイント”を理解して予算設計を
| 業種 | 初期費用(目安) | 特に注意すべき点 |
|---|---|---|
| 飲食業 | ₱1M〜1.5M | 内装業者選びと許認可手続きの遅延 |
| サービス業 | ₱300k〜400k | 登記の整合性とビザ戦略 |
| 教育業 | ₱1.2M〜1.6M | 認可・寮設備・講師採用体制 |
起業の成功は、事業そのものの良さだけでなく、「始め方」次第で大きく変わるということを忘れずに。
✅ まとめ:フィリピン起業には「最低500万円」以上を想定すべき
フィリピンでの起業は、日本に比べて資本金要件や規制が緩い一方で、“見えないコスト”や“制度対応費”が多く存在する国です。
「物価が安い」「人件費が安い」という情報だけで起業費用を低く見積もると、後で工事遅延・契約不履行・運転資金ショートといったリスクに直面することになります。
起業にかかる初期費用:事業規模別の目安
| 規模・業種 | 初期費用の目安(日本円換算) | 備考 |
|---|---|---|
| デジタル系・オンライン事業(小規模) | 約100万〜300万円 | 物件・雇用なし、PC+ウェブ環境中心 |
| 小規模飲食店・カフェ(セブ市内) | 約400万〜800万円 | 物件契約、厨房設備、営業許可含む |
| 事務所・小売店舗(スタッフ雇用あり) | 約500万〜1,000万円 | ビザ・BIR登録、家賃前払い・改装あり |
| 英語学校・教育ビジネス(寮付き) | 約3,000万〜4,500万円 | 寮・校舎の契約と改装、スタッフ採用、多言語対応など |
見落としがちな「高額コスト項目」
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家賃の前払い+保証金(6〜7ヶ月分)
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改装・施工費の増加(見積額の2倍超は普通)
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ライセンス取得の“行政対応費”
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複数言語でのWeb制作・広告出稿費
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税務・ビザ対応のコンサル費・法務コスト
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想定外の“沈黙期間”を乗り切る運転資金
✅ 現実的な結論:
フィリピンでの起業は、制度や文化への理解に加えて、「想定外の初期費用」や「物価上昇によるランニングコスト」への備えが欠かせません。
特に、
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光熱費(電気代)は世界的に見ても高水準で、事業形態によっては月10万ペソ以上になることも
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輸入物価の上昇、為替リスク(ドル高)も重なり、開業後のコスト圧力は年々増加傾向です
つまり、「初期費用+6か月分の運転資金」くらいを常に視野に入れて準備することが、2025年以降のフィリピン起業では必須といえるでしょう。
締めの一言:起業は「勢い」よりも「設計力」がすべて
フィリピンは、たしかに日本に比べて低資本でスタートできる国かもしれません。
しかし、その“安さ”に油断すると、あとで大きな代償を払うことになるのも現実です。
物件契約・法人設立・ビザ・人材採用――すべてにおいて、コストとリスクを見積もった“現実的な事業設計”ができるかどうかが、あなたの起業の命運を握ります。
「250万円でなんとかなる」ではなく、
「最低でも1,000万円はかかる」前提で動くのが、今のフィリピンでの正解です。
そして、想定よりも安く済んだら“ラッキー”、
くらいの感覚でいた方が、ずっと安全に、長く事業を続けられるでしょう。
